【3月18日 水曜日】

この日は、付き人。
殿はとある撮影を。

そして、この日の殿は、テレビではあまり見せないような表情をされていて、めちゃくちゃカッコ良かったのです。

すると、そんな撮影中、どこからともなくこんな声が聞こえてきたのです。

「くーーカッコイイー!くーーたまらんなー」

はじめ、僕の心の声が漏れ出てしまっているのではないかと自分を疑ったのですが、それは紛れもなく違う所から聞こえてきていたのです。

「くーーー良い!すごいカッコイイーー!!」

ただ、これが写真撮影ならそのような声が聞こえてくるのはわかるのですが、今日の撮影は動画撮影だった為、普通ならばこのような声が聞こえてくるのは稀、というかゼロに等しいのです。

ですが、そこで僕はキョロキョロと周りを伺ってみることにしたのですが、なぜか、疑わしい人はどこにも見当たらなかったのです。

〝え…なぜなぜなぜ?〟

〝じゃあ…やっぱりこの声は…?〟

不安になってきました。

なぜかと言いますと、もしこの声が僕の殿への思いが制御出来ずに出ていたとすれば、それは相当ヤバい奴に見られたに違いないからなのです。

だって、いくら殿のことが好きだとしても、弟子っ子が師匠の撮影中に、

「くーーーカッコイイー!」

はヤバすぎるのです。

すると、そんな感じで僕が焦っていると、またまたその天の声のような声が聞こえてきたのです。

「今の見た!?カッコイイよなー!」

〝誰だ…僕と全く同じようなことを思い、そして、それをハッキリと声に出しているのは〟

もう〝取っ捕まえてやる!〟と言わんばかりに、僕はまるで探偵のような眼光で探すことにしたのです。

すると、その声はどうやら、モニターの近くに居る人だということがわかったのです。

〝星は、あそこにいる〟

まるで気分は探偵、と言わんばかりの僕は、さらにそこに焦点を当てて凝らしていたのですが、少しすると、そのモニターから出てきた人がボソリとつぶやいたのです。

「いやぁ、カッコイイ!」

〝あ、あの人だ!〟

もう逃しません。
もう、あの人が犯人だっていう証拠を、ボクは見ちゃったんだから。

と、お次はその人の素性を調べる作業に入りました。

すると、その人を追っていると、こんな紛うことなき事実が浮かび上がってきたのです。

〝この撮影の、監督さん〟

まさに、盲点。
敵は一番目立つところにいた。
って、敵ではない。

ただ、そこからも監督さんは嬉々として撮影に励まれ、さらには、監督さんはその後も終始、

「くーーーカッコイイなー!」

と、それはそれは素敵なお声をあげ続けられていたことに、

〝ぼ、僕も少しばかし言ってみたい…〟

なんて気持ちに僕は触発されてしまい、

「ん~カッコイイ。うん、カッコイイ…」

と聞こえるか聞こえないかぐらいの声で密かに参戦したものの、やっぱり監督さんの、

「くーーーたまんねーな!」

なんていう素敵なお声には到底敵うものではなかったのでした。

そして、そんな嫉妬さえしてしまいそうな監督さんの殿への偏愛ぶりは、その撮影時間にも影響されてか驚愕の2時間で終わったのでした。

今までの撮影で、一番早かったです。

で、僕はというと、偏愛ぶりに負けた事実を洗い流すためにサウナで散々汗かいて帰宅して、録画した番組を見まくりました。

では。