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〜条件サイド
横田さんの代わりに俺と条は現場のバーに向かった。
ビックリしたのは、聡美さんもいたことだ。しかも、男連れで。
俺と条は顔をくっつけてヒソヒソ話をした。
「いったいどうなってんの?なんで不二子までいんの?」
「知らねーよ。お前が呼んだんじゃねーの?宝が女口説くとこ見せてやるとか言って」
「ふざけんなよ。んなことしたら、また邪魔が入っちゃうだろ!下手すりゃ逆美人局だよ。『あたしの男に手を出したわね!』って」
「あ、そういうこと?なんだ。わかった!じゃ、宝が呼んだんだ」
「は?どうゆうこと?」
「横田作戦が失敗したときの不二子作戦。プランB。逆美人局で金を巻き上げる」
「それ、普通に犯罪だろ。捕まっちゃうよ」
「じゃ、なんで不二子が居合わせちゃってんだよ」
「つか、あの男誰?」
ふつうに、2組のカップルに見えるけど…。
「え?これってもしかして、美人局よりヤバい現場なんじゃない?」
「いわゆる、修羅場…?」
「……」
〜宝サイド
そうか。わかった。聡美もグルなら隠す必要ない。堂々と計画実行だ。お兄ちゃん達にはしっかり仕事してもらうぞ。
ハッ。バカバカしい。条件や聡美はどんな俺を期待して来た?
照れ屋の俺がお色気にタジタジしながら、赤い顔して女をホテルに誘うところか?聡美が連れてきたその偽彼氏に俺が嫉妬してイライラするところか?
まったくあんたらどんだけ俺にかまいたいんだよ。
サッサと終わらせて、あとで3人にたっぷり事情を聞かせてもらうとするか。
俺はくるりと体をカウンターに向けた。
これで聡美に俺の横顔がはっきり見えるはずだ。カウンターに両肘をつき、
「フッ…」
と笑ってチラッと聡美に流し目を送る。
聡美はハッと息を呑んだ。
不敵な笑みを浮かべる俺は予想外だって?
俺はタジタジもイライラもしねーぞ。こんなのは慣れっこだ。何年条件コンビのイタズラに付き合わされてきたと思ってんだ。