離れていても ① 条先生 | 上目遣いのけんちゃん先生 V6カミセン 小説

上目遣いのけんちゃん先生 V6カミセン 小説

V6の三宅健と森田剛と岡田准一をイメージしたイケメン教師が、今どきの女子高校生たちと繰り広げる学園ドラマ。ドラマの進行の合間に出てくるけんちゃん先生の古典講義は勉強にもなる?

午前8時40分。


淹れたてのコーヒーを持って、ノートパソコンの前に座った。


朝日が差し込んで画面が見にくい。立ち上がってブラインドを調節し、戻って来てコーヒーを一口飲んだ。


振り向いて、一応背景を確認。数学雑誌が並ぶ本棚。


オッケー。プライベート感の無い自室。


ヘッドフォンをつけて、キーボードを叩く。


椅子にもたれて、教科書を開ける。


1時間目。2年生のオンライン授業。今日は学校じゃなくて、自宅から。


生徒たちの顔がパソコンの画面に映し出される。


8時45分。始業。


「みんな、おはよう」


「おはようございまーす」


「顔見せて。村上は?いる?ああ、いたいた。みんな揃ったら始めるよ」


全員の出欠を確認して、授業を始める。


説明15分。質疑応答10分。


「はい、じゃ今から問題解いて」


俺はタバコを一本取り出し、火をつけた。椅子にもたれて紫煙をくゆらせ、問題を解いてる生徒たちの姿を眺める。


すると、一人の生徒がパッと顔を上げた。


「条先生…」


「ん?」


腕を伸ばして机の奥の方にある灰皿にタバコの灰を落とし、また咥えた。


「質問?」


横を向いて煙を吐き出す。


「…あの…タバコ吸ってる…」


「ああ。それが何?」


「めちゃくちゃかっこいいです」


「は?問題は?解けたの?」


「まだです」


「さっさと解け」


「先生…タバコ吸っていいんですか?」


「学校は禁煙だけど、ここは俺の部屋だ。わかんない奴いたら、手挙げて」


何人かが手を挙げる。


「オッケー。ノート映そっか」


身を乗り出して生徒たちが映し出したノートを見比べる。


「ああ…っと…前田と宮本はおんなじ間違いしてんな」


タバコを咥えたまま、眉間に皺を寄せて他も見る。


「山下、計算ミス。吉村、2π−45°は何度だ?」


「315?」


「はい、だから?」


「え?あ!そっか。330°じゃ条件満たさないから…」


「そうそう」


手を挙げた生徒のノートを見ながら、順番に解き方を教えてやってるうちにそろそろ終わる時間になった。


俺は灰皿にタバコを揉み消し、今日のまとめをして、


「はい。じゃ今日はここまで」


と言って、片手でネクタイをクイッと緩めた。


「今日の課題提出したら終了」


「ありがとうございました」


「どういたしまして」

ペコリとやってから顔を上げたら、画面いっぱいに20人の笑顔があった。


「どういたしましてだって」

「先生なんかおかしい!」


「そうかなぁ」


「だって普段の授業だったらどういたしましてとか言わないじゃん」


「ああ、そっか」


確かに、起立、礼だけだ。


「じゃ、なんて言えばいい?…ありがとう、か」


何に対して?

俺の授業を聞いてくれて?

みんなの笑顔を見せてくれて?

みんなが無事でいてくれて?




普段、バカとかくっついて来んなとか言ってるけど、今は、オンラインでもみんなの笑顔を見れることが、心から嬉しい。



「…ありがとう」




「先生、早く学校始まって先生に会いたいです」



「俺も早くみんなに会いたいよ」


やべ。生徒が可愛い。


「来週から登校日始まるから…」


なんか、すげー会いたくなって来ちゃった。


「また学校で会おう」


「はい」


「じゃ」


「ありがとうございました」


「ありがとう」




通信を切って、ヘッドフォンを外した。

ふぅと息をついて、ネクタイを解く。両手を上げてうんと伸びをし、思わず叫んだ。



「ああーっ!早くみんなに会いてーっ!」



ついでに、あいつにも。