GUILTY 84 和佳子の罪 | 上目遣いのけんちゃん先生 V6カミセン 小説

上目遣いのけんちゃん先生 V6カミセン 小説

V6の三宅健と森田剛と岡田准一をイメージしたイケメン教師が、今どきの女子高校生たちと繰り広げる学園ドラマ。ドラマの進行の合間に出てくるけんちゃん先生の古典講義は勉強にもなる?


東京に帰って岡田は久しぶりに妻の病院を訪れた。



妻はベッドに座って、ぼんやり庭の銀杏の木を眺めていた。



ワコ」



和佳子は振り向いて、ビクッとした。



「ああ。なんだ。准くん」



「なんだはないだろう」



岡田は苦笑して、窓の外を見た。黄色に色づいた銀杏の葉が綺麗だった。



「綺麗だね」



「でも、そばに行くと臭いの。潰れた銀杏の実がたくさん落ちてて



そう。ああ、そうだ。和佳子、その駿作からの手紙、見た?」



和佳子は黙り込んだ。



「あのまだ見てないかな?先生に預けたんだけど」



すると、和佳子はスッと引き出しを指差した。



「そこに入ってる」



「ああ。読んでくれたんだ。返事とかもし、書けるなら持ってくけど?」



「なんて書いたらいいかわからない」



「そんなの、なんでもいいよ。難しく考える必要ない」



和佳子はまた黙り込んだ。



「元気だとか、ありがとうとかなんか



「元気じゃないし、ありがたくもない場合は?」



岡田は思わず和佳子から顔を逸らした。目を閉じて、ふうとひとつ息を吐く。



落ち着け。



「ワコ駿作は



「あなたと私と駿作の絵が描いてあった。パパとママだってふふふ



岡田は眉をひそめた。



「何がおかしい?」



バカみたい」



岡田は耳を疑った。



「え?なんて



「アハハバカみたい!」



和佳子は振り向いて、岡田を見た。


岡田は狂気の目を見つめ返した。



「和佳子君が駿作を愛せないなら、俺はもう君とはやっていけない」



和佳子の表情に変化はなかった。



「別れて欲しい。この通りだ」




岡田は頭を下げた。



すると、和佳子は笑った。



「ふふアハハ!バカみたい!あなた、バカみたいよ!」





***




病室を出て、岡田は主治医と向き合って座っていた。



「今までは、妻を追い詰めた罪の意識となんだろう



岡田は膝の上に肘を乗せ、額の前で手を組んで言葉を探していた。



「責任感っていうのかな。そんなもので妻を見捨てるわけにはいかないと思っていました。微かな希望もあったし。だけど



岡田は首を捻り、絞り出すような声で言った。



「もう限界です」



組んでいた手を離して、抑えきれず、声を荒げた。




「もう振り回されるのはたくさんだ!俺だけならまだいい!駿作の存在を無視されることには耐えられない!彼女に駿作への愛が見られないことにもう耐えられないんです‼︎



岡田は歯を食いしばって、拳を口元に当てた。


目を閉じて眉間に皺を寄せる。



「岡田さん



すみません」



主治医は岡田の涙に胸を痛めた。



「もう別れたい。僕は妻を愛していない。さっき彼女に別れて欲しいと言って来ました」



「そうですか。それで和佳子さんは?」



「笑ってました。俺のことをバカみたいだと言って笑ってました」



主治医は気の毒そうに眉をひそめると、席を立った。



「ちょっと、和佳子さんの所へ行ってきます。しばらくお待ち頂いていいですか?」



「はい。すみません」






しばらくして、和佳子の元から戻って来た主治医の言葉は、岡田には信じられないものだった。



狂った妻の言うことだ。むろん真っ赤な嘘、あるいは妄想である可能性が高い。




バカみたい。あの人。自分の子供でもないのに。





和佳子がそう言ったというのだ。




「まさか




「でも、もし駿作君が本当にあなたの子でないのなら




「いやでもじゃあ和佳子は俺を騙してたってことですか?そんなことハッ



あるわけがない。



「和佳子さんの方こそ、ずっと罪の意識に苛まれていた、とは考えられませんか?他の男性との間にできた子を、あなたの子だと偽ったことに、彼女は罪悪感を抱いていた。けれど、彼女はひとりで秘密の罪を背負って生きるほど強くはなかった。だから



精神を病んだ?」



「彼女が怖がっていたのはいつかその罪があなたにバレること」



「そんな




「だって、成長するに従って駿作君はあなたではなく、相手の男性に似て来るんですよ?彼女だけが知っている本当の父親に



本当の父親だって?


岡田は首を振った。


やはりありえない。駿作が自分の子じゃないなんて。




「先生は、和佳子の言うことが本当だと思うんですか?」




「わかりません。でも、妙に腑に落ちるところはあります」




岡田は黙り込んだ。




「和佳子さんの言っていることが真実かどうか確かめますか?岡田さん」