「誰と話してた?」
電話を切ると、いつのまにか三宅が岬の前に立って、岬を見下ろしていた。
さっきまで髪をかきむしってわからないわからないと混乱していた三宅とは様子が違った。
ずいぶん落ち着いて、まるで別人のようだった。
冷ややかな目が岬の携帯に注がれた。
「…健ちゃん?」
思わず携帯を後ろ手に隠した。
「警察かぁ。へーぇ。自首させるつもりなんだ。悪いことは悪いことだって?」
「健ちゃん、どうしたの?」
岬の知っている三宅ではない。
「なにが?」
「何がって…なんかさっきまでと全然…」
「ああ。思い出したからだよ」
「思い出したって…」
「事件の真相」
「……」
「っていうか、知ってんのは俺だけだからね。あいつの口からは聞けないよ」
「あいつ…って?」
「いつも俺にあれこれ指図する忌々しいお人好し。森田の時は、やっとあいつも俺の言うことわかったかって思ったのにな」
岬は愕然として三宅を見上げていた。
目の前にいるのは、三宅であって、三宅ではない。
これはいったい…
三宅は岬の隣に座って、肩を抱いた。岬は思わずビクッとなった。
「なにビビッてんの?あんたの大好きな健ちゃんだぜ?俺」
三宅は微笑んで岬の肩を抱く手に力を入れた。