※本日2話目の更新です
2係の捜査員たちの顔は強張り、部屋は凍りついた。さんざん探して、やっと探し当てた成果物である。が、やったぞ!という喜びの声は誰からも上がらなかった。
「…停止しろ」
長野が低く呟いた。
「はい。次も見ますか?」
「…ああ」
長野は少し見ると、また停止させ、「次」と言った。長野の「次」という合図とともに、DVDが入れ替わり、次々と惨たらしい映像が流れた。
しまいに長野は、
「もういい…」
と言って上を向き、目を閉じた。ひとつ、息を吐くと、ゆっくりと目を開けた。
その目は憤怒と侮蔑に満ちていた。
「反吐が出る…!」
長野は誰にともなくそう吐き捨てると、バン!と勢いよくドアを開け、ジャケットを翻して部屋を出て行った。
カッカッカッ…!
廊下を大股で歩きながら、携帯を取り出し、井ノ原に電話をかけた。
「もしもし」
「ああ、長野くん?」
「続報だ。今から令状取りに行く」
「三宅の?」
「それはそっちの仕事だろ」
「だよね。じゃ、独竜会?」
「ああ」
「罪状は?」
「児童ポルノ禁止法違反。いや…むしろ、強制性交等罪」
電話の向こうで井ノ原が息を呑むのがわかった。
「大阪にある独竜会の関西支部にもガサ入れする。そっちで会うかもしれないな」
***
「長野さん、なんて?」
岡田は電話を切った井ノ原に小声で聞いた。
井ノ原の表情は暗い。
携帯をしまうと、ふう…とひとつ息を吐いた。
「独竜会の押収品から、児童ポルノが大量に見つかったらしい」
「児童ポルノ?」
「ああ。…それも、どうやら援助交際の女子高生とかいうレベルじゃないらしい」
「…というと?」
「もっと…低年齢の…強制性交等罪とか…」
「え?」
背筋がゾッとした。岡田にも井ノ原にも、幼い子どもがいる。
「じゃあ、あの顧客リストっていうのは…」
「児童ポルノを買ったか、あるいは児童買春の客…」
岡田は吐き気を催し、生唾を飲みこんだ。
ふと時計を見ると、ここに来てから30分以上経っていた。
「遅いですね。三宅」
「ああ。そうだな」
井ノ原も店の中を見回した。カウンターの中にいる坂本と目が合った。井ノ原は嫌な予感がした。
逃した…か…?
坂本が隙を見て、警察が来ていると三宅に連絡したのかもしれない。いや、彼に不審な動きがあれば気づいたはずだ。
井ノ原はガタッと席を立ってカウンターに向かった。岡田も後に続いた。