GUILTY 40 凛子と長野 | 上目遣いのけんちゃん先生 V6カミセン 小説

上目遣いのけんちゃん先生 V6カミセン 小説

V6の三宅健と森田剛と岡田准一をイメージしたイケメン教師が、今どきの女子高校生たちと繰り広げる学園ドラマ。ドラマの進行の合間に出てくるけんちゃん先生の古典講義は勉強にもなる?

「あの男、独竜会…って言ってたような…?気のせいかしら」


凛子は首を捻って、また歩き出した。


仕事の後、朝まで客と飲み歩いて、ひとりで喫茶店でモーニングを食べた帰りだった。


「ああ…眠い」


フワァとあくびをしたら、すっと隣にタクシーが止まった。見ると、後部座席に長野が乗っている。


窓を開けて、


「朝帰りですか。お嬢さん」


と言った。



「あら。ほんとに来ちゃった。呼んだふりしただけなのに」


「乗って行きませんか?」


「朝から博ちゃんに会うなんて」


「なんですかそれは。人を夜の男みたいに」


「ふふふ」


凛子はタクシーに乗り込んだ。


タクシーが駅に着くと、長野に促されて凛子はタクシーを降りた。


「家まで送ってくれるんじゃないの?」


「残念ながら、家にはしばらく戻れなくなりました」


「え?」


「こっちへ」


長野は駅近くの駐車場に駐めてある自分の車に凛子を乗せると、発進した。


「どういうこと?家には戻れないって。ゆっくりお風呂に浸かりたいんだけど」


「ゆっくりお風呂には浸かれますよ。なんなら、プールもある」


「え?」


長野は流れるようなハンドル捌きで、すいすいと車の列を追い越し、あっと言う間に凛子を都内のホテルに連れて来た。


「え?博ちゃん…朝っぱらから///」


長野は凛子を部屋まで案内すると素早くドアを閉めた。


「しばらくここにいて下さい。外出は禁止。僕がいいと言うまで」


「ふたりで?」


長野はハッと笑った。


「そうしたいところだけど、お凛さんひとりで。ベッドはふたつとも使い放題」


「意味ないわよ」


「店には体調を崩したとか実家の親が病気だとか何か言い訳をして、休んで下さい。少なくとも一週間」


「嘘でしょ⁈」


「一週間もしないうちに別のホテルに移動しなきゃいけなくなるかもしれないけど」


「いったいどうなってるの?」


「端的に言って、命が危ない」


「誰の?」


「お凛さんの」


「嘘でしょ⁈」


「信用ないな。二度も言われるとは」


「どうして私の命が…、あ…!」


凛子は口に手を当てた。


「さすが、察しがいい」


「あのリスト?」


「そう。相当やばい物だったようです。先日、あのリストに載ってる客が殺された。独竜会は、凛子さんが持ち出して犯人にリストを渡したと思ってる。つまり、共犯」


「私の共犯は博ちゃんだけよ」


「殺し文句だな」


しばらく見つめあって、長野は頭を下げた。


「すみません。こんなことになるなら、お凛さんに頼むんじゃなかった」



「…私以外に頼める人いたの?」


長野は顔を上げた。


「いません」



「『お凛さんあっての…?』」


「今の僕ですから」


「博ちゃん…」


凛子が不安げに眉を曇らせ、そっと長野の胸に寄り添った。


「しばらくの辛抱ですよ。美味しい物を差し入れさせます」


「博ちゃんは?」


「え?」


「博ちゃんは、来てくれないの?」


「僕はこの事件を解決しなきゃいけない。解決したら、一緒に美味しい物を食いに行きましょう」


「博ちゃんの奢りで、うんと贅沢な物を」


「そうですね」


「うんと贅沢な場所で」


「いいですよ」


「ふたりきりで」


「もちろん」


長野はにっこりと笑って、凛子の肩を掴んでそっと離した。



「僕たちは秘密の関係ですから」



「そうね」



「くれぐれも、大人しくしてて下さいよ。お凛さん」


「わかったわ」


「ありがとう。それじゃ」


長野はサッとドアを開けて、出て行った。