「あ…はい」
先生がポカリを持って来てくれた。私は肘をついて少し起き上がり、自分で飲んだ。
「どう?まだクラクラする?」
「マシになって来ました」
「よかった。吐き気は?」
「ありません」
「他になんか症状ある?」
「うーん…多分、大丈夫です」
「よかった。もっと飲む?」
「はい」
先生はポカリを手渡し、ソファの横にしゃがんで、私が飲むのを見てる。
「ありがとうございます」
ポカリを先生に渡す。
「他には?」
「え?」
「して欲しいこと、ある?」
し、して欲しいこと?
先生にして欲しいことなんて…。そんなの…いっぱいあります。
いきなり、「キスして下さい」とか言ったらびっくりするだろうな。
間違いなく、準備室追い出される。
そんなこと思ったら、ちょっと笑えた。だいぶ気分が良くなって来た。
「なに?」
私につられて先生が笑顔になる。
「して欲しいことは…あるけど…」
「ん?」
「頼めません」
「遠慮しないでいいよ」
「言ったら、してくれますか?」
「俺にできることなら」
優しいんだよなぁ…。
そして、鈍いんだよなぁ…。
そういうところが大好きなんだけど、ちょっと自覚して欲しい気もする。
「やろうと思えばできるけど、先生は多分あまりしたくないこと…とかは?」
「え?…俺がしたくないこと?」
唇を尖らせ、黒目を上に向ける。
「たとえば?」
なぞなぞのヒントを欲しがる子供みたいな顔をして私を見る。
ふふ…。何の疑いもないリアクションが可愛い。