「俺のことはいいから」
って私の手からハンカチを取り上げた。
「大丈夫?」
「あ…」
「座る?」
「ちょっと…横に…なりたいです…」
「わかった」
片手で私を支えながら、もう片方の手でハンカチをズボンのポケットにしまった。
「あ…ハンカチ…」
「洗って返すよ」
「そんな…」
「保健室閉まってるから…」
あ。夏休みだから…?
「隣の準備室のソファでいいかな」
「はい」
「歩ける?」
「……わかりません」
「じゃあ、ちょっとごめん」
先生がハンカチをしまった方の手を私の膝裏に差し込んだ。
次の瞬間、ふわっと体が浮いて、私は反射的に両手を先生の首に回した。
お、お姫様抱っこ⁇
ああ…スカートが…。パンツ見えてないかな///
先生は構わず私を抱き上げて音楽準備室のドアを足で蹴って開けた。
普段は生徒立ち入り禁止の、宝先生だけの部屋。
私は、黒い革張りのソファに下ろされた。
ドサッ。
先生が、汗をかいた真剣な顔で私を見下ろしている。
まるで、先生が私に覆い被さってるみたいで…
ああ…クラクラする。
しばらくすると、先生が、
「ここで…いい?」
って少し戸惑ったような顔をする。
ここで…いい?…って///
ダメだ。またエッチな妄想が…。
先生とならどこだっていいです!って言いそうになるのを堪えた。
「い…いいです」
「じゃあ…」
先生が顔を近づける。
…え⁇
「手、離して」
上目遣いで私を見て苦笑する。
あ!
私は先生の首に両手を巻きつけたままだった。先生はその輪から抜けようとして、首を引っ込めた。だから顔が近づいたんだ。
「あ…すみません」
慌てて手を離すと、先生が体を起こした。
うう…この状況…。
私は
先生の部屋で
ソファに寝かされて、
立ってる先生に
全身を見下ろされてる。
ああ…先生の獲物になった気分。
私は、襲ってくれても全然いいです!って心の中で叫んだ。
すると、先生が身をかがめて、手を伸ばした。
…え?
その手がスカートに触れる。
…ドキッ!
先生は、そっと折れたスカートの裾を直して、脚を隠してくれた。
優しい…。紳士だ。
「暑い?軽い熱中症かな」
呟きながら向こうに行って、冷蔵庫を開けた。
氷を取り出して、シンクで何かしてる。頼もしい背中。キビキビした動き。
振り向くと、手に氷の入ったビニール袋を持っていた。
ソファの前にしゃがみ、それを私の額に当てる。
「…どう?…気持ちいい?」
首を傾げて私の目を見る先生のどアップ。
「は…はい…///」
「暑かったからね。ごめんね?」
「いえ…先生が謝ることじゃ…」
「もっと早く来て部屋冷やしといたらよかった」
「先生いつも早いのに。遅かったんですか?今日」
「…うん」
「珍しい…」
先生はなぜか少し照れくさそうな顔をして、俯いた。