Moon 3 | 上目遣いのけんちゃん先生 V6カミセン 小説

上目遣いのけんちゃん先生 V6カミセン 小説

V6の三宅健と森田剛と岡田准一をイメージしたイケメン教師が、今どきの女子高校生たちと繰り広げる学園ドラマ。ドラマの進行の合間に出てくるけんちゃん先生の古典講義は勉強にもなる?

帰りの飛行機に乗り込んだ俺は、リュックの中から台本を取り出して、ドサッと、座席に座った。


ああ~。覚えなきゃなー。でも…


「ねみっ…」


あくびが出た。


「眠そうだな、健」


隣から剛の声。


「うん…。セリフ覚えてたからさ」

「お前まだ覚えてないの⁈帰ったら稽古始まんだろ?」

「テヘッ」

「テヘッじゃねーよ。女の子アンアン言わせてる暇あったら、セリフ覚えろよ」



えっ⁈い、今、なんて?


「聞こえてたぞー夕べー」


剛がニヤリとして、突然切ない顔作って、


「…ああん、健ちゃん…!…すごい…!」

って腰を振った。


マジかっ⁇

確かに隣は剛の部屋だったけど…。いやいや、これは剛の罠だ!ハマっちゃいけない。ハマっちゃ!


「は…はあ⁈…何言ってんのお前」


ハハッて笑ったら、


「え?なになに?どうしたの?」


って岡田が後ろの座席から顔をのぞかせた。


「こいつさー、夕べ俺らとメシ行かなかったじゃん」

「うん」

「したらさー、部屋に女連れ込んでんの」

「ええっ⁈」

「連れ込んでないよ‼︎」


まったく何言い出すんだよー剛は。バレてない、バレてない。絶対バレてない。しっぽ出すなよ、俺。


「なんだ、健くん、そうだったんだー。セリフ覚えるからって言ってたじゃん」

「だろー?なのに、隣から、…あん…ダメ…健ちゃん!とか聞こえてくんだぜ?」

「え?日本語?外国人じゃないの?」

「なんでだよっ!」


俺は思わず突っ込む。


「剛!お前、ないことないことゆーなよ!」


「あることあること言ってんだよ」


「二人ともさー、それを言うなら、あることないこと、でしょ?」


「「わかってんだよ‼︎」」


俺と剛は同時に岡田に突っ込む。


「もう、俺セリフ覚えるから、あっちいけよ!剛!」


「おまえらうるせーぞー」


と坂本くん。


「なに?健がどうかしたの?」

ってイノッチ。


「こいつ、夕べさー…」

俺は、慌てて後ろから剛の口を手で塞ぐ。

「もういいってば!剛」

「なになに?」

「なんでもない!なんでもない!」


やっべー。これ、ほんとにバレてんじゃね?声は確かに出てたけど、そんな壁薄いのかなー?

俺は剛を追い払って、台本に向かう。集中!集中!でもすぐに睡魔が襲ってきて…。


気がつけば、俺は剛の肩に頭を載せて爆睡していた。


やべっ‼︎あれっ?台本は?


剛が台本を読んでいる。


「あ!勝手に読むなよ!」

「爆睡しといて、お前何言ってんだよ」

「なんで、隣に座ってんだよ」

「はあ?元々俺の席なんだよっ!俺の肩でさっきまでよだれたらしてたヤツが何言ってんだよ」

俺は台本を取り戻す。

「いいから、あっちいけよ!」

「ちょっとは覚えたのかよ?」

「もうほとんど覚えてんだって」

「そうなんだ。じゃあ…」


剛が台本を奪って、相手役のセリフを語り出した。

しばらく、会話が続いて…やがて訪れる沈黙。


「お前だよっ!」

って剛。


「俺⁈…あ!そっか、そっか。ああ、わかった!思い出した!」


剛とセリフを合わせるうちに、ミオちゃんと過ごした時間が遠のいていく。



浜辺に浮かんだ月。寄せては返す波。潮の匂いを運ぶ風。


黒髪のショートボブ。ターコイズのピアス。


ああ…ミオちゃんが月みたいに遠ざかっていく。


沈黙の後で、剛と目が合う。


「…あ、また俺?」


「覚えてねーじゃん」


剛が呆れて台本を投げ出した。


まあ…もうしばらく…余韻に浸っててもいいかな…。


どうせ飛行機が日本に着いたら、慌ただしいアイドルとしての日常が待ってんだ。


俺は座り直して腕を組み、再び瞼を閉じた。



fin.