入学式が終わって、条件部屋に引き上げてくると、健がさっそく紋付袴を脱ぎ出した。
脱いだものを衣紋掛けに丁寧にかけてる健自身はというと…
上半身裸でパンツ一丁に白足袋。
普通の男なら間抜けな格好かもしれないけど、健なら…
いや、やっぱ健でも間抜けだ。
「パンツに足袋ってお前、すっげー間抜け」
「え?」
健はドサッとソファに座って片方の膝に足をのせて足袋を脱いだ。
俺はジャケットを脱いで、健の向かいに腰を下ろし、片手でネクタイを緩める。
「どうせなら褌はけよ」
「フンドシ?」
健が眉尻を下げて、は?って顔をする。
「見てみたいな。健くんの褌姿」
そう言いながら、宝が白い琺瑯のポットを火にかけた。
コーヒーを淹れてくれるらしい。
「は?ふざけんなよ。褌ってさ、あれ、お尻が丸見えじゃん!」
思いつきで言った俺のどうでもいい言葉にも乗っかってくるこいつらが可愛い。
「だからいいんだろ。いいケツしてんじゃん」
「何言ってんだよ。おじさんの生尻なんて誰もみたくねーよ」
「健くんは奇跡のおじさんだからね〜。お尻も奇跡的なんじゃないの?奇跡の生尻」
「は?」
「生は気持ちいいぞ。健」
「あ!ほら、条が言う方がよっぽどやらしいだろ!」
って健が俺を指差す。
「あ?なんの話?」
ってとぼけたら、宝が
「生は音がいいって話でしょ?」
って…それもまた卑猥な感じに聞こえるぞ。
「え?音⁇」
健がソファの背に腕を乗せて、宝を振り向く。
「だから、生演奏はほら、倍音が豊かだからいいってこと」
健がこっち向いて、ニヤッとして
「パイオツが豊かだって」
って言うと、宝が顔を赤くした。
「言ってねーだろっ!バ、イ、オ、ン!」
顔を赤くしながら突っ込む宝が可愛くて、思わず笑った。