リボン 12 条の判断 | 上目遣いのけんちゃん先生 V6カミセン 小説

上目遣いのけんちゃん先生 V6カミセン 小説

V6の三宅健と森田剛と岡田准一をイメージしたイケメン教師が、今どきの女子高校生たちと繰り広げる学園ドラマ。ドラマの進行の合間に出てくるけんちゃん先生の古典講義は勉強にもなる?


※本日2話目の更新です。

11 条と千帆からどうぞ。








「あ。仕事、大丈夫?間に合う?」



「…うん。そろそろ…」



テーブルで勘定を済ませて、俺と千帆は、ラウンジを出た。



「あ。そうだ。桃がさっき、ママが何か大事なこと自分に隠してるんじゃないかって」


そう言った瞬間、千帆がビクッとした。


「も…桃が?…そんなこと言ったの?」


「うん…」


動揺する千帆を見て、それが事実だと直感した。


ロビーで待ってた桃が俺たちを認めて、微笑んだ。ちょっと微笑み返してから、俺は千帆に言った。


「何のことかわからないけど…ちゃんと話してやった方がいい」


「…うん。…そうね」


「…千帆?」


顔色が悪い。


「大丈夫か?」


「…うん。急いで来たから…ちょっと…」


すると、桃が心配そうに駆け寄って来て、今日はもう仕事を休んで欲しいと言った。


「ママと…話したいことがたくさんあるの…っ!」


もし、千帆がうんと言わなかったら、口を挟むつもりだった。桃の話をゆっくり聞いてやるべきだって。桃の切羽詰まった思いを感じたから。


だが、俺が口を挟むまでもなく、千帆は仕事を休んで桃と話をすると言った。



時計を見ると、俺ももう仕事に戻らないといけない時間だった。



でも、桃の切羽詰まった表情や、千帆の疲れた様子や、それに、千帆が隠してる大事なことというのが、どうしても気になった。



明日の朝、ふたりのすっきりした顔を見てから東京に帰るべきだと、俺の勘がそう言っていた。


「千帆…よかったら…ここに一泊しないか?桃と」



「え?」


「部屋取るよ」


そう言うと、桃に向き直って、


「桃、あいつとお前のためじゃない」


と言った。



「お前とママのためだ。ゆっくり話せよ。母娘で。ちょっと、疲れてるみたいだし…このまま帰すのも心配だ」


千帆が止めるのも聞かずに俺はフロントで部屋を取った。


「条くん…」


戸惑う千帆を呼んで、こっそり話した。


「ふたりでちゃんとよく話し合った方がいい。忙しいのはわかるし、それが桃のためだってのもわかるけど…桃は、今、不安がってる。こういうとき、しっかり向き合ってやらないとダメだ」



すると、桃が不安げな顔で、


「条くん…お仕事、いつ終わるの?」


と聞いた。



「え?」


「お仕事終わったら…条くん、来てくれる?」


「桃、ダメよ。無理言っちゃ」


「でも…」


俺は頭の中に今日のタイムスケジュールを思い浮かべる。今夜の全体レクが終わったら、すぐに消灯、点呼。俺の立番が11時30分まで。ホテルは目と鼻の先だけど…


「来れなくはないけど…遅くなるな。12時前」



「いいよ。待ってる。だって明日東京に帰っちゃうんでしょ?」


「ちょっと…桃!条くん、ごめんなさい。いいのよ。気にしないで」



「条くん…」



桃が訴えるように俺を見る。


『怖くて聞けない』


さっきの桃の言葉を思い出した。



「わかった。じゃあちょっとだけ顔出すよ」


そう約束して、俺は急いでホテルを出た。