春秋覇王 72 のぼせる | 上目遣いのけんちゃん先生 V6カミセン 小説

上目遣いのけんちゃん先生 V6カミセン 小説

V6の三宅健と森田剛と岡田准一をイメージしたイケメン教師が、今どきの女子高校生たちと繰り広げる学園ドラマ。ドラマの進行の合間に出てくるけんちゃん先生の古典講義は勉強にもなる?

黄准が白布をパシッと空中でキャッチした拍子に、姫の顔に飛沫が飛んだ。


「きゃ…っ!」


「あ!申し訳ない」


思わず体ごと振り向くと、


「きゃあ…っ!」


姫がさらに悲鳴を上げて顔を覆った。


「あ!」


黄准は慌てて白布を広げて股間を隠した。


「いや、あの…姫、もう結構でございます!」


黄准はそう言うなり、ザブンと湯の中に飛び込んだ。


姫は、


「失礼します!」


と逃げるように出て行った。侍女が慌てて後を追いかけた。



黄准はふたりが行ってしまうと、隣の健白をジロリと睨んだ。


「健白様…」



「…なんだよ」


健白は、玉の汗を浮かべて、とろんと黄准に流し目を送った。


男ながら姫に勝る妖艶さに、黄准は不覚にもドキッとしてしまった。


「い、いたずらが過ぎます…」



「うるさい。お前が姫とイチャイチャしてるから」


「してないっ!健白様が…っ…健白様?」


健白がコツンと黄准の肩に額を預けて、


「上がるに…上がれなかった…だろぉ…」


と息苦しそうに言った。



「のぼせられたのですか⁇」



「…クラクラする…」








幸い、健白の湯当たりはたいしたことがなかった。

少し休憩すると、快王の招きに応じて酒宴の席に座った。だが、そこに黄准の姿はなかった。


さすがに酒席で王のふりはできない。臣下でありながら姫に背中を流させた黄准は、姫に会わせる顔がなかったのである。


快王は姫に晩酌をさせて、健白にこう言った。


「どうです?健王様。我が娘ながら美人でしょう」


「お綺麗ですね。あ。僕はもうけっこう。酒はあまり好みません」


姫は騙されたことを知っても、不思議に不快には思わなかった。


それは健白の美しさによるのかもしれなかったし、また、黄准の背中を流したことが嫌でなかったからかもしれなかった。


「それより…」


と健白はチラリと姫を見た。


姫はドキッとした。


主従揃ってお美しい…。


「黄准は『姫に会わせる顔がない』と、ひとりで部屋にこもっています。この度の戦の功労者はあいつです。よろしければ、黄准の所に、酒を持って行ってやってくれませんか?」