翌日、条件部屋で俺たちは条くんに昨夜のあの子の件を報告した。
テーブルの上で健くんが両手を広げる。
「お前が整理すんのかよ」
って条くんが腕組みして向かいの健くんを上目遣いで見る。
「悪いかよ。いいじゃねーかよっ」
って笑って健くんは話し始めた。
「彼女は中学三年の時に両親が離婚したため、母親の実家に母子で引っ越した。
そこで、高1のときに亡くなった叔母さんのかつての部屋をあてがわれ、受験勉強をすることになる。
多感な少女は、叔母さんが自分と同じ歳ぐらいのときに夭逝したことに、少なからぬ影響を受けた。で、こっからは俺の想像なんだけど」
「いらねーな」
って条くんが、しっしって手を払ってそっぽ向く。
「聞けよ!当たってるって。絶対」
「俺は客観的な事実だけを知りたい」
「いいから聞けって。事実からもう答えがわかっちゃったんだから俺。たぶんだけど」
「まず間違いなく、間違ってる」
「まあまあ、聞いてあげて?」
って俺は腕組みしたまま、隣に座ってる条くんの腕を少し触った。
俺はすでに昨夜健くんからその推理を聞かされて知っていた。
「やがて、彼女は、叔母さんがわずか二ヶ月しか通えなかったヴィクトリー高に、進学したいと思うようになった。
そしていよいよ入試の日。彼女は運命の出会いを果たす!
なんと試験監督はパツパツのスーツに身を包んだエロ気溢れる体育教師」
「音楽!」
「エロ毛ってどこの毛?」
「毛じゃねー!色気の気!」
「だからどこの毛だよそれ」
「条くん、ここ、ここ」
って俺は自分の髭を触ってみせる。
「ああ、そっち?俺はてっきり…」
ってズボンに手を入れようとする。
「そっちでもこっちでもねーよ!」
「そっちが溢れてたら大変だろ」
って俺は笑った。
「もじゃもじゃー‼︎って?」
って条くんが脚を広げて前でもこもこって手を動かした。
「ヤバイだろ!そんな試験監督!」
俺は手の甲で鼻に触れてワハハって笑った。
「もじゃもじゃーっ‼︎」
「もじゃもじゃーっ‼︎」
向かい合わせに座った条件コンビが脚を広げて同じポーズをして俺を笑わせる。
「ハッハッハ…!」
って顔を背けて笑いながら、俺も一緒になって、
「はい、もじゃもじゃーっ‼︎」
って三人でポーズして、爆笑した。
「くっだらねー!」
って健くんが眉尻を下げて笑った。
ひとしきり笑ったあとで、はぁーってみんなしてそれぞれソファにもたれて…
「おい、健」
「なに?」
ってまだ笑顔のままの健くん。
「お前、話の途中だっただろ」
「え?そうだっけ?」
って目をまん丸にして、
「ああ!そうそう!」
って手を叩いて身を乗り出した。
俺と条くんは呆れて目配せして笑い合った。