keep going 28 健、出会う | 上目遣いのけんちゃん先生 V6カミセン 小説

上目遣いのけんちゃん先生 V6カミセン 小説

V6の三宅健と森田剛と岡田准一をイメージしたイケメン教師が、今どきの女子高校生たちと繰り広げる学園ドラマ。ドラマの進行の合間に出てくるけんちゃん先生の古典講義は勉強にもなる?

俺は学校へ向かう最後の急な坂道を登りきって、職員玄関前に自転車を止めた。


黒く佇む校舎を見上げると、校長室にだけ、まだ灯りがついていた。


息を切らして真っ暗な階段を駆け上がり、条件部屋に入って電気をつけた。

パチン。


「あったあった!」


携帯は俺の机の上に置きっぱなしになっていた。


さっそくゆかりに電話をかけて、遅くなることを伝えた。ヘルパーさんは俺が帰宅するまでいてくれるらしい。


「ごめんね」


「ううん。大丈夫。もう熱もないし、食欲出てきたから」


「そうなんだ。なんか買ってくよ。欲しいもんある?何が欲しい?」


俺は電話をしながら、部屋の電気を切って真っ暗な廊下に出た。


バタン、とドアを閉めて、少し腰を落として片手で鍵をかける。


ゆかりが何か言ったけど、聞き取れなかった。


「え?なに?何が欲しいって?俺?」


「え?」


「俺が欲しいって言った?」


「言ってない!そんなことっ///」


「あ、そう。言ってないか」


って照れ笑いする。いや、わかってたけどさ。


カチャッ。鍵がかかった。


「言ってません」


「じゃ、心の声が聞こえちゃったか」


って笑いながら、鍵をポケットにしまって振り向いたら…



「うーわっ⁈」


目の前にひとりの生徒が立っていた。


長い黒髪の大人しそうな子だった。見たことがないから、3年じゃない。1年か?


「あの…あたし…」


ってその子がおずおずと口を開いた。


「どうして…ここにいるんですか?」


それはこっちのセリフだよっ‼︎


「健ちゃん?」


ってゆかりの声がして、


「ああ、ごめん!いや、なんでもない。ちょっと…またあとで。いったん切るよ。いい?」


「うん」


「もしかしたら、ちょっと遅くなるかも」


「うん。大丈夫だから。ムリしないで」


「ありがとう。じゃ」


通話を切って、その生徒を見る。



「なにやってんの⁇いったい。こんな時間まで。団の練習?とっくに下校時間過ぎてるだろ。ルール違反は減点だよ減点。何団なの?」


「え?」


「赤?黄?緑?…え?まさか桃団じゃないよね」


彼女は黙って首をかしげる。


「とにかく、早く帰んなきゃ。家の人心配するよ?何年何組?」


「あ。1年5組です」


「え⁇じゃあ桃団じゃん!あとで滝沢団長に怒られるよ?はい、帰った帰った」


って彼女を急き立てて一緒に階段を降りた。


「なにやってたの?ほんとに」


「…あの…わかりません」


って涙声になる。


「はい?わからないって何?どういうこと?」


彼女が踊り場で立ち止まって、


「どうやってここに来たか、どうしてここにいるのか…わからないんです!」


って両手で顔を覆った。


俺は呆然と、泣き出した彼女を見る。


そして、ピンと来た。


「君、さっき1年5組だって言ったけど…担任誰?」


「…安田先生です」


やっぱり。

1年5組の担任は、堂本先生だ。

ってことは、例の、あの子か?たしかに制服はうちの制服だけど…。


「君、いったい、どこの学校の1年5組?うちの生徒じゃないよね?」