教科書に載ってる源氏物語 3 | 上目遣いのけんちゃん先生 V6カミセン 小説

上目遣いのけんちゃん先生 V6カミセン 小説

V6の三宅健と森田剛と岡田准一をイメージしたイケメン教師が、今どきの女子高校生たちと繰り広げる学園ドラマ。ドラマの進行の合間に出てくるけんちゃん先生の古典講義は勉強にもなる?

「うめぇ…っ」

ってベンチに条と並んで座って、藤の花ソフトクリームを舐める。


宝は向かいで立ったまま、

「条くん、いただきまーす」

って、ソフトクリームをカプッと頭からいった。


宝がうまいこと甘えて、しっかり条に奢らせた。


三人でしばし無言で薄紫のソフトクリームを味わう。


「…藤の花…って…色だけだね?」


って宝が上目遣いで言う。


「そう?」


って条が、


「藤の味がする」


「ほぉんとにっ?」


「俺も」


「「するよなぁ?」」


って条とふたりで顔を見合わせると、


「ほんとに?一口ちょうだい」


って宝が顔を近づけたから、俺たちはソフトクリームをパッと引いて体でガードした。


「おんなじの食ってんじゃねーか!」

「同じだから!」

「だって俺の藤の味しないもん!」


「お前の舌がわるいんだよ!」


三人でワイワイ言ってたら、隣の夫婦と思しきカップルの奥さんの方に、クスッと笑われた。



つばの広い帽子を被った上品な女性だ。


ふっとすぐに俯いて長い髪を耳にかけ、ソフトクリームを舐めた。


条が俺の耳に唇を寄せて、

「人妻、人妻」


って弾んだ声で囁く。


「やめなさいっ」

って低い声でたしなめつつ、そっとその奥さんを盗み見る。


くっきりとした二重瞼、長い睫毛(人工的)。鼻筋の通った鼻。

なかなかの美人だ。


奥さんの視線の先を追う。


つばの陰から覗く瞳は、じっと宝を見つめていた。


あっというまにソフトクリームを食べ終わった宝は、くしゃっと片手で紙を握りつぶして、腕を上げた。


スッと紙屑がきれいな弧を描いて、離れたゴミ箱にポンと入った。


「ナイス」


って言った条の方をチラッと見て微笑むと、両手をポケットに突っ込んで横を向いた。


藤棚を見つめながら、眩しい春の日差しに顔をしかめている。


それから、見られてることに気づいたのかパッと振り向き、奥さんとバチっと目が合った。


視線は奥さんの顔に一瞬だけ止まって、また戻ってきて、足元に落ちる。


俯いてポケットから手を出し、指先で唇に触れる。


奥さんは、まだ宝を見ている。いや、見惚れている。

宝は唇をいじりながら眉間に皺を寄せる。難しい顔をしているのは、多分照れ隠しだろう。


奥さんの熱い視線を感じるから。


旦那の方は熱心にスマホを見ていて、奥さんの様子に気づいていない。


おいおい、こんな美人、ほっといていいのかよ旦那。もしも、宝が光源氏なら、人妻だろうが遠慮はしないぜ?


「行こっか?」


って宝が俺たちに言った。

奥さんの熱い視線から逃れたいんだろう。可愛いやつめ。


これが光源氏なら、逃げたりはしないんだけどな。気の利いた歌でも詠みかけて…。



「すげー美味しいっすね、これ」



って条の声が聞こえて…


え?光源氏、お前⁇


サッと立ち上がる条を見上げた。