ペラペラだよ、剛 | 上目遣いのけんちゃん先生 V6カミセン 小説

上目遣いのけんちゃん先生 V6カミセン 小説

V6の三宅健と森田剛と岡田准一をイメージしたイケメン教師が、今どきの女子高校生たちと繰り広げる学園ドラマ。ドラマの進行の合間に出てくるけんちゃん先生の古典講義は勉強にもなる?



「ペッラペラだったよね。ビックリしちゃった。何これ?え?って。わかんなかったもんね。振込用紙かなんか入ってんのかな?みたいなさ。いただきまぁす」


健が、俺が作った菜の花のパスタを口に運ぶ。頬を膨らませて、咀嚼する。


もぐもぐしながら上目遣いで俺を見る目が、美味いって言ってる。膨らんだ頬っぺたとクリクリした目。小動物みたいだな。


可愛いなと思いながらフッと笑って、


「何の振込用紙だよ」


って突っ込むと、



「え?だからあれ、ファンクラブの会費?」


ってニッと笑う。



俺は振り向いて手を伸ばし、棚の上に置いてあった封筒を取る。


中からカードを出して、眺める。


GO MORITA


ペラっとめくって、


GO MORITA


そして、剛の筆跡で、


森田剛





「…名前、書きすぎじゃねー?」


「デザインの一部なんでしょ。GO MORITA 。ほらほら、紙だって前の二人と全然違うじゃん」



「ふぅん」


「なんかさ、箱に入ってるクッキーとかチョコとかにさ、こんな説明書き入ってるよね?」


「ハハッ…。結婚の報告とクッキーの説明書き、一緒にしてやんなよ」


と言いつつ、確かにペッラペラだな、とひっくり返しては眺める。




「あれじゃない?破りやすいように」




「え?」



健がクールな表情を浮かべて、フォークを置き、水を飲んだ。


ゴクリと喉を鳴らして、


「だってさ…」


って喉に何かつっかえたのか、ちょっと顔をしかめた。


「あんまり立派だとさ、破るのにちょっと抵抗感じるっていうか、罪悪感とか?感じちゃうかもしれないじゃん」


「いや、破るの?」


それ前提か?


「破りたい人はいるでしょ」


ってまたパスタを口に運ぶと、


「俺も破ってやろうかな」


ってもぐもぐした。


「え?」


「冗談だよ。冗談に決まってるでしょ。破るわけないけど、どっか行っちゃいそうだなぁ。あんまりペラッペラ過ぎて。失くしそう」


「失くしたりはしねーけど…」


俺は、立ち上がって、棚から会報を入れたファイルを取り出すと、その中に剛のカードを丁寧にしまった。



「どうする?坂本くんはさ、その時が来たら、どっちにする?」


「どっちって?」


「ペラッペラ派か、厚紙派か」


「フッ…」


思わず笑ってしまった。


どうでもいいよ。そんなこと。


「健は?」


「俺はぁ〜…そうだなぁ…。ペラペラ派かなぁ」


「破りやすいように?」


「あ、もしくはさ、逆にー、すっごい硬い紙とかにすんの。コンチキショー!ってすんげー力入れないと破れないとか。なんか発散できそうじゃない?」


「ハハハッ…」


「必死に破ろうとしてるうちに、涙が汗に変わる、みたいなね」


健が空になった皿にフォークとスプーンを揃えて置いて、手を合わせた。


「ごちそうさま。おいしかった。春の味がしたよ」


「春の味?」


「うん。菜の花が、ちょっとほろ苦くってさ」


健はそう言うと、上目遣いで俺を見ながら、お上品にナフキンで口を拭った。




fin.