数学の神様 最終話 二人三脚 | 上目遣いのけんちゃん先生 V6カミセン 小説

上目遣いのけんちゃん先生 V6カミセン 小説

V6の三宅健と森田剛と岡田准一をイメージしたイケメン教師が、今どきの女子高校生たちと繰り広げる学園ドラマ。ドラマの進行の合間に出てくるけんちゃん先生の古典講義は勉強にもなる?

「だってさ、条、俺の鉛筆吉富にあげちゃったしさ」


傘もな。



「結果は?どうだった?」


「受かったってさ」


「ほらほら!役に立ったな」


「うん。役に立ったよ。サンキュ」


ついでに傘も役に立ったよ。って胸の内で呟く。


「じゃ、会議あるから」


って、俺の肩にある健の手を振り払い、出て行こうとすると、



「あ!ちょっと!だから俺もコンビニ行くって言ったじゃん!」


って俺が閉めかけたドアをバンと手で押さえた。


二人で廊下を歩きながら、


「条、今日何時に帰る?俺、誰かさんのせいで傘ないからさー、今日帰り送ってよ。車なんでしょ?」


「自転車は?」


「置いて帰る。あ。車に入んない?」


「ムリに決まってんだろ」


「じゃ、俺だけでいいや」


「当たり前だろ」



チラッと腕時計を見る。急がないと会議が始まる。



「行くわ」


って走り出すと、健が一緒に走り出した。



「お前は急がなくていいだろっ」



って走りながらぴったり横につけてる健に言った。



「二人三脚、二人三脚!」


って健が俺の肩を抱く。


「はあ?」



「はい、いっちに!いっちに!右!左!バラバラじゃねーか!」


人が急いでるってのに、構わずこういう絡み方してくる健のうっとうしさ。



「合わせろよっ!条!内側。はい、こっちの足だって!」


めちゃくちゃ楽しそうだな。エア二人三脚。


めんどくせぇ。


めんどくせぇから、合わせてやる。抵抗するともっとめんどくさくなるから。


俺も健の肩に腕を回して


「ハイ、1、2!1、2!」


って声を出して走り出した。


足が揃って、どちらからともなくスピードを上げる。それでも、ぴったり揃う。


楽しいかも…。


その角を曲がったら、数学準備室だ。


ノッてきたぜ。


「コーナー、コーナー!」


って俺は勢いを緩めず叫ぶ。



「どうする?ゆっくり行く?」


「攻める!」


「はあ?」


勢いよく角を曲がったら…


ドン‼︎


「わあっ⁈」


俺たちは、揃って廊下に尻餅をついた。


俺たちがぶつかったのは…


「わっ!ごめん!大丈夫?」


宝だった。


黒いVネックシャツにグレーのジャケットを羽織った宝が、かがんで俺たちに手を差し伸べている。


走ってる男二人にぶつかられても平気な音楽教師…。


「お前は壁かっ!」


って健が言うと、


「ごめん、ごめん」


ってウケながら健の手を掴んでヒョイと引っ張り上げて立たせた。


「立派だなほんとに」


健がニヤニヤしながら、黒いTシャツの上から、宝の胸板を撫で回す。


「あ!ちょっと!」


って照れ笑いしながら、宝が胸を押さえて前屈みになる。


どさくさに紛れて乳首を摘まれたらしい。


「えいっえいっ!」


って健がまだ攻める。


「ちょ…っと…ぉっ!」


両手で胸を押さえて、宝が苦笑している。


健が宝とじゃれ合ってる隙に、俺は数学準備室に滑り込んだ。


ジャケットの裾を払って、ドサッと自分の椅子に腰掛ける。


「あ、条先生」


チラッと見渡すと、全員揃っていた。


あらかじめ配っておいたレジメに視線を落とし、ふぅ…と静かに息を整える。


吉富の泣き顔や、健のはしゃいだ顔を頭から振り払って、腕時計を見る。


ジャスト2時。


オッケー。間に合った。




「じゃ、今から教科会議始めます」




fin.