天の羽衣 24 賽は投げられた | 上目遣いのけんちゃん先生 V6カミセン 小説

上目遣いのけんちゃん先生 V6カミセン 小説

V6の三宅健と森田剛と岡田准一をイメージしたイケメン教師が、今どきの女子高校生たちと繰り広げる学園ドラマ。ドラマの進行の合間に出てくるけんちゃん先生の古典講義は勉強にもなる?


「俺に欠けているものが無いとしたら…?つまり、王になる条件が、俺の方にはもう揃ってるとしたら?」


「揃っているとしたら…?」


弟は首を傾げました。

兄の方の問題ではなく、何か他の理由があって、兄は王になれない、ということか?

それはつまり…


既に自分という王がいるから?


まさか…いや…



「兄さんが王になるのは…」



「俺が王になるのは?」



「王である俺が、天上から消える時…?」




本当は今すぐにでも娘のもとへ飛んでいきたい。何もかも投げ出して、愛する人を思い切りこの胸に抱き締めたい。幾夜その衝動に苦しんできたか…。


たったひとりの愛する娘すら幸せにしてやれない自分が、天王として天を治めていることに、ずっと違和感を抱いていた…。


早々に兄に次期王の印が現れたことは、もしかしたら、そんな思いでいる自分にこの先、王は務まらないということの証なんじゃないか。


いったい…どうしたらいい?


「でも、もし、そうじゃなかったら?俺が今地上に降りて、それでも兄さんの胸の痣が消えなかったら…」



「まだ王でない俺が天を治めるか…」



「そんなことをしたら、災いが…っ」



しかし、兄は真っ直ぐに弟の目を見つめてこう言いました。




「災いなんて、古くからの言い伝えに過ぎない。そんなものに囚われるな」



弟は驚いて兄を見ました。


兄のその強い意志に満ちた眼差しこそ、王に相応しいものに思えました。



「さあ、どうする?自分を偽って、王であり続けるのか、それとも、自分に正直に生きるか?


確かに、お前がいなくなっても、俺の胸の痣が消えるとは限らない。その場合は、災いがもたらされることがあるかもしれない」




「兄さん…」




「いいか?これは、賭けだ」



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ふたりはじっと見つめ合いました。




「俺が王になる条件が、俺にあるのか、お前にあるのか」




弟はめまぐるしく考えました。




「選び取れ。天を背負っているのはもうお前ひとりじゃない。だが、今のところ、決めるのは王であるお前だ」





しばらく俯いて思案していた弟が、パッと顔を上げました。


本当は答えは最初から決まっていたのです。




そして、



「どう考えても、兄さんに欠けてるものは無いように思える。むしろ俺より兄さんの方が王に相応しい」



と言いました。


兄は力強く頷きました。そして、




「お前が出したその答えを信じろ」




と言うと、扉を開けました。




扉の外には四人の兄たちが並んで雲の上に立っていました。