母も、叔父さんも、そして村の産婆も昏睡した娘を見守っていました。
やがて、娘が目を開けました。
男は、娘の顔を覗き込みました。
「あなた…羽衣は…?」
「お前のおかげで、無事だ」
「ああ…よかった…」
娘はホッと安堵のため息をつきました。それからすぐにウッ…と、眉間に皺を寄せて苦しみました。
「大丈夫か⁇」
お腹の痛みに耐えながら、娘は、
「大丈夫です」
と言いました。そして、
「お腹の子は…?」
と呟きました。
男は辛そうに顔を歪めて、首を横に振りました。
「そうですか…」
「ゆ、許しておくれ…っ‼︎」
母はその場に突っ伏しておいおい泣きました。
叔父さんも肩を震わせて泣きました。男は俯いてじっと涙を堪えていました。
まもなく産婆も叔父さんも帰りました。娘は、母に、ここへ羽衣を持ってきてくださいと言いました。
母は、囲炉裏の火で乾いた羽衣を持って来て、それから隣の部屋に下がりました。
娘は、起き上がって羽衣を手に取り、
「ああ…ほんとに…無事でよかった」
と言って頬ずりしました。
それからきれいに畳んで男の前に置きました。
三つ指をついて、
「今までお世話になりました。羽衣をお返しします。どうぞ、天へお帰りください」
と言って深々とお辞儀をしました。