天の羽衣 16 別れのとき | 上目遣いのけんちゃん先生 V6カミセン 小説

上目遣いのけんちゃん先生 V6カミセン 小説

V6の三宅健と森田剛と岡田准一をイメージしたイケメン教師が、今どきの女子高校生たちと繰り広げる学園ドラマ。ドラマの進行の合間に出てくるけんちゃん先生の古典講義は勉強にもなる?

娘の枕元に、男は正座していました。

母も、叔父さんも、そして村の産婆も昏睡した娘を見守っていました。


やがて、娘が目を開けました。


男は、娘の顔を覗き込みました。



「あなた…羽衣は…?」


「お前のおかげで、無事だ」


「ああ…よかった…」


娘はホッと安堵のため息をつきました。それからすぐにウッ…と、眉間に皺を寄せて苦しみました。


「大丈夫か⁇」


お腹の痛みに耐えながら、娘は、

「大丈夫です」

と言いました。そして、


「お腹の子は…?」


と呟きました。


男は辛そうに顔を歪めて、首を横に振りました。



「そうですか…」



「ゆ、許しておくれ…っ‼︎」

母はその場に突っ伏しておいおい泣きました。

叔父さんも肩を震わせて泣きました。男は俯いてじっと涙を堪えていました。



まもなく産婆も叔父さんも帰りました。娘は、母に、ここへ羽衣を持ってきてくださいと言いました。

母は、囲炉裏の火で乾いた羽衣を持って来て、それから隣の部屋に下がりました。



娘は、起き上がって羽衣を手に取り、


「ああ…ほんとに…無事でよかった」


と言って頬ずりしました。


それからきれいに畳んで男の前に置きました。



三つ指をついて、


「今までお世話になりました。羽衣をお返しします。どうぞ、天へお帰りください」



と言って深々とお辞儀をしました。