小学三年生の時、突然自分が「生きてるんだ」という自覚を持った。
生きていることが不思議で不思議で、周囲の人も生きているというのが不思議だった。
何がそんなに不思議だったのか思い出せないけれど、もしかするとあれが「自我の目覚め」というものだったのかもしれない。

そして生きていることに気づいたら、死ぬのが怖くなった。
人は死んだらどうなるのだろうと、考えれば考えるほど闇夜に落ちていくようで、手探りしても道が見当たらない。
回避する方法はないと、最初から知っていた気がする。
生まれたからには死ぬのは運命。
死亡率100パーセント。
そうだ、知っている。


『Too Young to Die』

主人公は17歳、事故で死亡するところからストーリーは始まる。
セリフの圧倒的なテンポの良さ、意味がないくらい豪華なキャスト陣。
夢のようにかわいいヒロイン。
お調子者の主人公。
ヒロインとの再会を夢見て、あの手この手を講じて現世へ舞い戻る。
その根性やよし。

ただ、毎回そんなにうまくいかない。
人間に生まれ変われることもなくインコやカマキリ、ザリガニに生まれ変わる。
チャンスは7回。
それを超えれば地獄の住人となる。

ちょっと中ダレを感じたが、そこはご愛敬。
タイミングは少し遅れ気味だが、ダレてくると新しいキャラクターが参入してきてまた楽しめる。
キャスト陣が無駄に豪勢なのがまた困ったところで(褒めてる)ウォーリーを探すように、あの人がここに! という感動もある。

7回目で天国へ生まれ変わったものの、そこは真っ白な、そして途方もなく退屈な場所だった。
何もしなくてもいい。
ボタン一つで万事解決。
和式トイレ型のベッドに横たわって日がな一日何も考えずに過ごす。

主人公は近藤の妻と息子に近藤の歌(その名も『天国』)を届け、彼らの拍手を得た後に地獄行きのボタンを押す。
仲間と再会、「かっこよすぎて地獄に落ちたんじゃねぇの?」近藤のセリフにシビれる。

ラストシーンは主人公が夢見たヒロインとのキス。
唇を重ねながら、薄く目を開けてヒロインのまつげを見る主人公。
確認したかったんだろうな。
ただのキスシーンとは違う意味があってよかった。



あんな面白そうな地獄なら、死ぬのも怖くないな。
そんな作品だった。



ちなみに地獄の一週間は現世の10年の設定だった。
そうか私の母はまだ一週間ちょっとしか過ごしていないのか。