「よろしくお願いします」
さっきまで緊張していたのが嘘だったかのようにグラウンドに立った瞬間からワクワクしだした。
監督、コーチ、裏方さん、選手、全員に挨拶をしてまわった。
監督に「打てなくてもいいから思い切ってプレーしてくれ!頑張れ!」
と声をかけてもらった。
去年、一昨年と一軍監督と挨拶程度で会話などしたことはなかった。
やっぱり監督から直接声をかけてもらえると選手はものすごくモチベーションが上がる。
よし!思い切りプレーしよう!
監督は力まないように「打てなくてもいいから」と言ってくれたんだと思いますが一軍で打てなくてもいいなんて事は絶対ありません。
結果の世界です。
結果を出さなければ二軍。
一軍と二軍は天と地の差です。
今俺は一軍にいる。
最高の舞台でプレーできる喜びを感じて思い切ってバットを振ろう。
その結果、打てなかったら二軍に行ってやり直すだけだ。
9年目ともなれば変な開きなおりが出てきていた。
試合前の練習が終わりスタメンを見たときスタメンには名前がなくベンチスタートだった。
その日の先発投手は左だったのでマリンに来るとき密かにスタメンかもみたいな期待を持っていたのだが...
スタメンを確認したので昼食を食べることにした。
マリンでは決まって「つけ麺大盛り」を食べるのが僕の定番になっている。
しっかり食べて試合に備えた。
時間が経ちシートノックが始まった。
その時スタンドにいるファンの方達を見渡した。
やっぱりお客さんがいてその中で野球できるのは幸せだな。
そう思った。
なかには「青松頑張れよ」と言ってくれるファンの方もいてより一層やる気になっていた。
18時15分プレイボール!
日本ハムファイターズとの一戦。
試合が始まった。
試合は負けていたがそのときはきた。
ベンチ裏で素振りをしていると立花コーチにブラゼルのところ行きます!
よし!きた!打ってやる!
「ブラゼルに変わりまして青松敬鎔」
ウグイス嬢の谷保さんの声がマリンに響きわたった。
その時鳥肌がたちまた緊張してきていた。
初球から振る!思い切り振る!
これを決めて打席に入った。
初球スライダー空振り。
初球振れたことによって緊張はとけた。
聞こえてくる応援!
なんか打てる気がしてきた!絶対打てる!
ボールもよく見えていた。
よっしゃこい!乾!打ったるわ!
嘘やろー!!!
最後の球投げた瞬間僕の背中めがけてボールが来た。
ドスっ!
背中を直撃。
知ってる人もおられるでしょうが僕のプロ初打席は許銘傑からデッドボール。
またデッドボールかよ!!
二軍教育リーグ初打席デッドボール。
二軍公式戦初打席デッドボール。
一軍初打席デッドボール。
全部初打席はデッドボールなのだ。
まぁこれはこれでネタになるからいいのだが絶対に打ってやると思っていただけにデッドボールは残念だった。
そんな七年振りの一軍の打席、自分らしいなぁと思いながらその試合が終わった。
明日から月は変わり八月。
次出たら絶対打つ!
興奮がまだ残りながらも眠りについた。
続く...