僕の背に隠された愛 | 日曜は勝手にショートショート
2014-04-06 23:48:35

僕の背に隠された愛

テーマ:ショートショート

私が帰宅すると、娘が浮かない顔をして本を眺めていた。

「どうかしたか」

「この本、もらったんだけど」と娘は本を私に差し出した。

しっかりしたハードカバーの本で、白い表紙には黒字で

『僕の背に隠された愛』とタイトルが書かれていて、

著者名は大空翔太となっていた。

「おおぞら、しょうた?」

「今つきあってる彼なんだけど、誕生祝って、この本くれたの」

奥付を見ると、今日、娘の誕生日になっている。

「作家なのか?」娘は首を振った。

「自費出版か。プレゼントのためだけに作ったんだな。中はー」

中をぱらぱらとめくると、中は真っ白だった。

「何も書いてないな」

「不思議でしょ」

私は中が真っ白な本があることを思い出した。

「文庫で中が真っ白な本、売ってるんだよ。

自分で書き込んで完成させるみたいな。そういうことかな」

「わたし、文才ないし」娘はむすっとした。「だいたい本とか読まないし」

そうだった。私と違って娘はまったく本を読まないんだった。

「彼は本を読むのか」私は尋ねた。

「ミステリが好きみたい」

ミステリが好きなのか。

そうなるとこの本に何かが隠されているのに違いない。

「あぶり出しというのがあってさ、火であぶると字が出てくるとかさ、みかんの汁をかけると字が出てくるとかさ」と言いながら、私はバカバカしくなった。

「んなわけ、ないか」

「ね、意味わかんないし」

「ただいま」その時、妻が帰ってきた。「どうしたの、二人して困った顔して」

私は本を妻に渡して彼氏からのプレゼントであることを話した。

妻は本をじっと見て、「簡単よ」とにっこり笑った。

「何が簡単なんだ」私はあっさり問題を解決した妻にちょっと怒りを感じた。

「だって『僕の背に隠された愛』でしょ」そういうと妻は本の表紙を持つとびりりと引き裂いた。

「え」「あ゛」私と娘が同時に驚きの声をあげた。

「背と言えば、本の背、タイトルが書いてある細いところ。この本の背に愛が隠されているわけ」

妻が破った本の背にあたる部分には、指輪が隠されていた。

「この指輪がプレゼント。面白い子じゃないの」

つうか、私は暗い、重い奴だと思うが…。

娘の顔を見るとー。




※最近読んだ某北欧ミステリからネタをパクリました、

いえ、オマージュです。

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