アンネの日記事件 | 日曜は勝手にショートショート
2014-03-02 21:12:02

アンネの日記事件

テーマ:ショートショート

『アンネの日記』やホロコーストに関する図書が破られるという事件が東京で起きた。

本を破るなどとはとても許すべきことではない。

「和戸村くん、君はユダヤ人でもないのに、何を怒ってるんだ」

まただ。パイプをふかしながら法牟図が私の考えを読み取った。

「どうして私が『アンネの日記』関連図書の破損について怒っているってわかったんだ」

「だって、大きな独り言、言ってるし」

しまった、気付かなかった。いつの間にか独り言を…。

「う、ううん。ところで法牟図、犯人は誰だと思う?」

「データが少なすぎてわからない」法牟図はあっさりとシャッポを脱いだ。

「ただ、いくつか推理は述べられると思うよ」

「ほ、ほんとかー」

「ああ。まず今回の『アンネの日記』関連図書破損事件を個人の仕業だとしよう。考えられるのは、死んでいなかったヒトラーだ」

「なにー。ヒトラーは生きていたのか!」

「ああ、落合信彦の『20世紀の真実』を読みたまえ。って、ネタバレしてしまったがー」

「そうか、さすが、法牟図、ヒトラーが犯人とは」

「いや、一つの推論でしかない。他に考えられるのは児童図書館の司書」

「え、図書館司書が?」

「ああ。『アンネの日記』を見ていて、アンネの写真がつい恋人を奪った女に似ていた。恋人を奪った憎さからつい司書が本を破ってしまった。これはまずいことをしてしまったと考える」

「ああ、それはまずいことだな」

「そこへ先輩の司書が来る。彼女は本が破られていたと先輩に告げる。そして他のアンネの本を調べに行くといって、アンネの他の本も破ってしまう」

「木を隠すなら、森の中、だね」

「そう。そして自分の罪を隠すために近辺の図書館を回って『アンネの日記』を破りまくったのだ」

「そうか、さすが、法牟図、司書が犯人だったとは」

「いや、これも一つの推論にしかすぎない。個人の単独犯と考えるとなかなか難しいので、個人ではないだろう」

「そうなのか」

「やはり団体の仕業だろう。となると、やはりネオナチか。アンネは反ユダヤの象徴だから、アンネ関連図書をなきものにしようとしたんだ」

「そうか、さすが、法牟図、ネオナチの仕業か」

「しかし、逆に事件は反反ユダヤの仕業かも。今回のアンネ騒動でホロコーストに対する関心が高まった。ホロコーストやアウシュビッツのことをよく知らなかった人たちが知ることとなった」

「そうか、さすが、法牟図、反ネオナチの仕業か」

「でもやはりデータが少なすぎてわからないな」

「そりゃそうだな」

「和戸村くん、そうかそうかと言ってないで、自分の考えを語りたまえ」

「………」私は一生懸命頭をひねった。

「君の考えは?」

「私の考えは…」私は言った。

「アンネだけに、案ねぇー、

なんちゃって」

法牟図は無言でパイプをくゆらせるだけだった。





ベルリンの焚書の広場には、空っぽの本棚のモニュメントがあって、

ハイネの「本を焼くものはやがて人間を焼く ようになる

という言葉が書かれているそうです。

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