労災保険における「通勤」の定義について | 四姉妹のパパは保険屋さん 〜保険は賢く活用しよう!〜

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長崎の保険代理店(有)ビッグ・ワンの代表取締役大木敬介のブログです。
2023年9月まではただの雑記ブログでしたが、今は賢く民間保険に入る為の周辺知識を頑張って発信しています。

労災保険は「業務上」もしくは「通勤」時に怪我した時や、業務との間に相当因果関係がある「疾病」に罹患した際に使用する事ができます。

 

「業務上」にも定義がありますが、比較的分かりやすいかな?と思いますので、今日は「通勤」について解説したいと思います。前置きになりますが、労災保険では業務上の災害を「業務災害」、通勤による災害を「通勤災害」と明確に区分しています。今回は何が「通勤災害」にあたるか?どんな場合には「通勤」と認められないか?というお話です。

 

「労災保険法」における「通勤」の要件は次のいずれかにあたるものとされています。

①住居と就業の場所との間の往復

②就業の場所から他の就業の場所への移動

③単身赴任先住居と帰省先住居との間の移動

 

一般的に「通勤」と思われているのは①ですよね。家から会社に行く時と会社から家に帰る時です。単身赴任者の場合は家族が住んでいる場所ではなく、自分が普段住まいにしているところが住居となります。ただし、天災やストライキ等でしょうがなくホテル等に宿泊する時にはそのホテルを住居とみなします。

②は「業務中」になるんじゃないの?と思われるかもしれませんが、労災保険上は仕事場から仕事場への移動は「通勤」の扱いとなります。ただし、外勤をしている人で特定地域を担当して複数の場所を行き来するような場合は、自宅を出てから最初の用務先が業務開始の場所となり、最後の用務先が業務終了の場所となります。

①と②に関しては実際に災害にあったり怪我をした日に「就業する事になっていた」か、「現実に就業していた事」が必要となります。遅刻、早出、残業等、通常の出退勤時刻と、ある程度の前後があっても問題はありません。

③はあまり「通勤」というイメージがありませんよね?でも労災保険上は、このいわゆる「帰省の為の移動」も「通勤」と認めてくれているんです。ただし、この帰省が原則として「就業日」と「就業日の前日」または「就業日の翌日」までに行われるものとされています。

 

①②③ともに別の要件もいくつかあります。1つ目は①②③の移動が「合理的な経路および方法で行われた事」です。特に問題となるのが「経路」です。合理的な経路とは「通勤(③の場合は帰省と読み替え)の為にいつも使っている経路(1つとは限らず、複数あってもOK)」「当日の交通状況でやむおえず迂回した経路」「マイカー通勤者が駐車場を経由してとおる経路」等を言います。「合理的な理由(道路工事や渋滞)」もなく「著しく遠回り」した場合には「通勤」と認められませんので注意が必要です。また、これらの要件全てを満たしていたとしても、その行為が「業務の性質を有するもの」であった場合には「通勤」とみなされません。これは「労災保険適用不可!」と言っている訳ではなく「通勤」ではなく「業務上」とみなされるという事です。具体例としては「事業主の提供する専用交通機関を利用して出退勤する場合」や「緊急用務の為に休日に呼出しを受けて出勤する場合」の移動時に発生した災害が「通勤災害」ではなく「業務災害」になります。

 

通勤と認められなくなる要件には他に「中断」と「逸脱」があります。「中断」とは「通勤ルート」は「合理的な経路」だったとしても、途中で別の私的な用事を行った場合、例えば「通勤ルート上の映画館で映画を観た後に帰宅」とか「通勤ルート上のパチンコ店でパチンコをした後に帰宅」「帰省途中で観光して帰省」等です。原則「中断」があった場合にはその「中断」より前までが「通勤」とみなされ、「中断」後は「通勤」とみなされません。

「逸脱」とは「通勤」の途中で業務や通勤と関係のない目的で「合理的な経路(通常の通勤ルート)」から外れる事です。「最新のゲームを購入する為に家を通りすぎて隣町の家電量販店に立ち寄った」とか、「ちょっと新しくできた施設を見たくなったので、いつもの道を外れて立ち寄ってみた」等ですね。「中断」の場合と同じく「逸脱(ルートから外れる)」までが通勤とみなされ、その後は原則「通勤」とはみなされません。

 

しかし「中断」と「逸脱」には「おまけ」というか「例外」があります。厚生労働省が認める「逸脱」と「中断」の例外となる行為は、

①日用品の購入その他これに準ずる行為

②職業訓練、学校教育法第1条に規定する学校において行われる教育その他これに準ずる教育訓練であって職業能力の開発向上に資するものを受ける行為

③選挙権の行使その他これに準ずる行為

④病院または診療所において診察または治療を受ける事、その他これに準ずる行為

⑤要介護状態にある配偶者、子、父母、孫、祖父母および兄弟姉妹並びに配偶者の父母の介護(継続的にまたは反復して行われるものに限る)

以上となっています。

「中断」の場合は、「合理的経路」の途中で「①~⑤の例外行為」を行う場合なので「移動中」は全て「通勤」とみなされますが、「①~⑤の例外行為中」は「通勤」とみなされません。「帰り道上のスーパーで買い物をしている最中に滑って転んだ。」等がそれにあたります。

「逸脱」の場合は「合理的経路」から離れて「①~⑤の例外行為」を行い、「合理的経路」に戻るまでの間は「通勤」とはみなされません。逆に言うと、例外行為の場合は、通常ルートを離れるまでと、通常ルートに戻った後が「通勤」とみなされる!という事になります。

 

さて今日は以上です!


このブログでは賢く民間保険に加入する為、ちゃんと自分で考えて民間保険を選ぶ為、もしくは民間保険に入らないという選択肢を取る為の周辺知識を発信しています。

 

まだまだ全然「労災保険」の内容には触れておらず、「通勤」の定義だけでここまで長くなってしまいました。労災保険は定義も難しく、給付も多岐に渡っていますので分かりにくい事もあるかもしれませんが、民間保険を考える上では外せない知識ですので、頑張って発信していきますね!

 

ほなまたです!

 

※今回の記事は2024年2月23日時点での情報です。御覧になるタイミングによっては最新の情報ではありませんので注意して下

さい。