あれは確か、夏直前の出会いだった。
きっかけは…あぁ、お前だったな。
そっと撫でてやると気持ちよさそうに鳴いた。
白い黒猫
俺はそう呼んでいる。
何でかって?
それは…それはこいつの目が、色を知らないから…
決まって仕事帰りの夕方
決まって古びた神社の
決まって同じ黒猫。
帰り道のコンビニで、猫用の缶詰を一つ買って帰る。
俺の住んでいるアパートの裏にある寂れた神社…
参拝するやつなどいないだろう。
雑草は好き勝手に生え、社はもう廃墟に近い
何の神様が祭られているかなんて、もはやわからないような神社だ。
目の見えない黒猫。
俺の足跡を覚えてくれたのか、
神社の階段を上り終える頃には、もう座って待っている。
「ただいま。」
俺がそう声をかけてしゃがみこむと、とてとてと歩いてくる。
初めて見たときは少し驚いた。
だって、まっすぐ歩けないんだ…こいつ。
「今日はマグロだぞー。」
ニャー、と一言
俺に返事をしてくれる。
高校を出て一年
小さな町の、小さなリサイクルショップに就職した俺は、勢いで家を出て今のぼろアパートに行き着いた。
惰性で仕事をして、飯を食って寝る。
そんな生活がしばらく続いて、つい数週間前こいつに出会った。
そして俺たちが出会って一ヶ月がたった頃。
あいつに出会った。