遠路を行く | Poco a poco -難病と生きる-

Poco a poco -難病と生きる-

スペイン語の「poco a poco」は、日本語では「少しずつ」「ゆっくりゆっくり」という意味です。遺伝性による難病、脊髄小脳変性症を患っていると診断された2015年7月(当時34歳)以降、少しずつ身体が動かなくなる恐怖と闘いながら、今日を生きる僕の日記です。恐縮です。

問題です。地元の最寄り駅から新宿駅まで私鉄で片道45分。新宿から千葉駅までJR線で1時間10分。そこからモノレールに乗り換えて、目的の駅まで30分。改札を出るまでに掛かる総時間は、どれぐらい掛かるでしょうか。正解はね、3時間以上。車椅子の不便さを舐めるなよ。



例えば地元の最寄り駅。常駐駅員はいつも一人。目的の電車が来る10分前に改札を通過しようとしたら、ダメだったのね。理由は、反対車線の同時刻の電車から降りられる車椅子の方をお出迎えしないと。うむ。それ以来、更に早い時間帯に駅のホームにて待つようになった。

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私鉄からJR線への乗り換えの利便性は、車椅子ユーザーには当て嵌まらないよ。新宿駅は一度改札を出て、グルっと回ってJR西口改札を訪ねる。この時点でタイムラグ。更に有人ステーションを経由すると、かなりの待ちぼうけ。この日は先客がいた。15分は待ったと思うね。

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モノレールでもひと悶着。降りる駅は駅員がいなかった。経費削減か。改札を通ろうとする。止められる。何でや。電子音で呟かれる。「入場記録がございません」とな。おい。乗り口で対応してくれた駅員よ。脇にインターホンを発見する。説明する。落ち度を認めてくれた。

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さて、ドアツードアで3時間半もの長旅の目的は、同病仲間のアツシさんの現在の居住先。彼からSOSが届いたのよ。最後に贅沢な物を食いたい。数か月後には施設に入る。先日も骨折した。もう満足に寝付くこともできない。早く来て欲しい。といった具合。穏やかじゃない。

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彼の要望はすき焼きだった。食材は事前に用意してくれている。特筆すべきは霜降りの見事な松坂牛。血統書付き。調理は僕がやったよ。火を通したぐらいだけど。何度か後ろに転倒しそうになった。旨かった。苦労した甲斐があった。だから、これが最後だなんて言わないで。