遠征1日目(自宅→代々木→巣鴨) | Poco a poco -難病と生きる-

Poco a poco -難病と生きる-

スペイン語の「poco a poco」は、日本語では「少しずつ」「ゆっくりゆっくり」という意味です。遺伝性による難病、脊髄小脳変性症を患っていると診断された2015年7月(当時34歳)以降、少しずつ身体が動かなくなる恐怖と闘いながら、今日を生きる僕の日記です。恐縮です。

翌日は患者会においても年一で力を入れているイベントの開催日である。絶対に負けられない。僕の活躍の場は二か所。のみ。本当は、もっと大立ち回りを演じたい。でも、声が出ないんだよ。懸念していたところ、友人から遊びの催促。カラオケ。嬉しい。発声リハビリだ。

 

 

夜はいつもの焼肉店を押さえている。場所は必然的に代々木での集合になった。たまに集まる女性2名と僕。歌の上手い友人と、同じ類の病の友人と。3時間交互にマイクを交換する。徐々に喉が開いていくのが分かる。頭の中で思い描いた言葉を、口にできる束の間の贅沢。

 

 

いつもの「炭火焼ホルモン まんてん」。代々木店は階段を上がった先にある。歩行器は入り口付近に停車。予約していた席まで、友人(当然、健常者の方)の肩を借りて移動する。今日は酒に飲まれても良い日。何故なら、近くのホテルを押さえてあるから。相変わらず美味い。

 

 
終盤の記憶が無い。友人の恋愛相談を一緒に受けていた気がする。恋愛体質の彼女。病が無ければと思う。マッチングアプリで、そんな彼女をつけ狙う小賢しい男たち。何目当てだと勘ぐる。僕らの病気は難治性。稀少疾患だ。なめて貰っては困る。そこで思う。戸田さん――。

 

 
最近、戸田さんに会わせろと懇願する友人が増えている。今夜もそうだった。一度だけ、お願いしたことがある。露骨に怪訝な表情をされた。だからもう頼まない。彼女の機嫌を損ねた先に、あるのは失望感。そんなことを考えながら、着いた古びた格安宿で眠りに就く。