ニッケ 全日本テニス選手権83rd | Poco a poco -難病と生きる-

Poco a poco -難病と生きる-

スペイン語の「poco a poco」は、日本語では「少しずつ」「ゆっくりゆっくり」という意味です。遺伝性による難病、脊髄小脳変性症を患っていると診断された2015年7月(当時34歳)以降、少しずつ身体が動かなくなる恐怖と闘いながら、今日を生きる僕の日記です。恐縮です。

先週中ごろ、会社のお偉いさんに呼び出された。何か悪さがばれたのかと冷や冷やしながら応じると、ニコニコしながら「コレ、君にあげるよ」と、何枚かの紙切れを貰った。「全日本テニス選手権」と書かれた、観戦チケットだ。そのうち1枚は、貴重な関係者席である。うちの会社が以前に支援していた、添田豪選手からいただいたものだそうだ。彼は今大会の第1シードとして出場している。なるほど、つまり応援に行けってことか。


 


思えば、プロ選手によるテニスの試合観戦はこれが初めて。テレビで全仏や全英を、夜更かししながら見ることはあっても、日本人の選手なんて殆ど知らない。クルム・伊達公子や錦織圭など、有名選手ぐらいしか関心がない。これでよく、テニスが趣味だなんて公言していたなぁ。なんて思ってるうちに、会場に到着。ここは国際展示場駅(りんかい線)から徒歩の距離にある、有明テニスの森よりセンターコート(有明コロシアム)。



応援すべき添田選手の、直筆サイン入り特別チケット。残る全ての一般チケットは、興味のありそうな同僚に配りきった。隣に座る友人も、テニス観戦はこれが初めて。独特な雰囲気に戸惑う。ちなみに添田選手は、無事に決勝戦まで勝ち進み、本日11:00からの試合に登場。外は雨だったが、屋根つきの施設で良かった。




ふと隣を見ると、見覚えのある顔が。クルム・伊達公子選手がすぐ近くに座っているじゃないか。なぜ周りは誰も気づかない。隣に座る女性だって、普通にしているし。って、彼女は競泳女子の元五輪選手だった岩崎恭子ではないか。さすが関係者席。僕らの前に座る人たちにいたっては、添田選手のコーチ陣だったし。もっと、堂々とすべきだったかも。



男子シングルス決勝戦は、6-7、6-3、6-4の接戦を制し、彼自身、初タイトルとなる添田選手の優勝。日本男子のエースとして注目を浴び、常に優勝候補と目されながらも結果が出ず、相当なプレッシャーがあったことだろう。勝利が決まった瞬間、目頭をおさえた彼に対する会場中の拍手が印象的だった。男子特有の力強いストロークも見ものだったが、両選手に共通する、リターンの正確さと脚力の強さによる長いラリーも見応えがあった。敗れた伊藤竜馬選手はまだ20歳。今後に期待。



続けて観戦した女子ダブルス決勝戦は、14:30頃からスタート。この試合の目玉は、やはりクルム・伊達公子選手(ピンクのシャツ)。前日に女子シングルス決勝戦に勝利した勢いそのままに、パートナーの藤原里華選手を鼓舞する立ち回りは超一流。対峙するペアは、姉妹で挑む米村明子・知子組。ダブルス独特の、スピード感溢れる試合展開が面白い。圧倒的な存在感によるクルム・伊達公子選手と藤原選手のペアが、常に主導権を握ったまま優勝。やはり彼女は偉大だった。