こんにちわ。
今日は 津地鎮祭事件 についてふれてみます。

津地鎮祭事件の概要です。三重県津市で市立体育館を建設する際に 市は神式にのっとり地鎮祭を行い その際に市は神官への謝礼等として 7,663円を 市の公金から支出しました。
この公金支出に対して ある津市議会議員は その支出が憲法20条3項、89条に違反するとして 市長に対して 公金支出の損害を補填することを求めて 住民訴訟を起こしました。

参考
憲法20条3項 国およびその機関は、宗教教育その他いかなる宗教的活動もしてはならない。
憲法89条 公金その他の公の財産は、宗教上の組織若しくは団体の使用、便益若しくは維持のため、又は公の支配に属しない慈善、教育若しくは博愛の事業に対し、これを支出し、又はその利用に供してはならない。

この裁判では 地鎮祭で公金を支出することが 憲法に規定する政教分離の原則に違反するかどうかが争われたわけです。

最高裁判決の判旨では
憲法20条3項の政教分離規定は 国家と宗教の分離を 制度として保障 することで 間接的に信教の自由の保障を確保するもの であるとし
宗教とのかかわり合いをもつ行為の 目的及び効果にかんがみ そのかかわり合いが 相当とされる限度を超えるものと認められる場合に これを許さないとするものである と述べています。
そして 憲法20条3項における 宗教活動 とは 行為の目的が 宗教的意義を持ち その効果が 特定宗教に対する 援助 助長 促進 又は 圧迫 干渉等 になるような行為をいう としています。

これが いわゆる 目的効果基準 とよばれる 政教分離の判断をする際の 基準とされるもので 判例により確立されました。つまりは 目的と効果 を考えて 相当とされる限度を超える場合のみ 違憲 とされ 宗教とのかかわり合いをもつ行為の中でも 宗教活動にあたらないものは 許される というわけです。

これは 国家と宗教の関わり合いを 完全に否定することが困難なことからも 妥当であるといえます。たとえば 初詣といった寺社の大規模な宗教的行事の際に 交通整理や混乱の回避のために 国家機関である警察が その手助けを行ったり 文化財として 国家から保護を受ける建築や作品には 宗教建築や宗教にかかわり合いを持つものが多く存在する といったことからも わかります。

さて 話は戻り この津地鎮祭事件では 今回の地鎮祭の目的は 専ら世俗的なものであり その効果は 神道を援助 助長 促進 又は 他の宗教の 圧迫 干渉を加えるものとは認められないため 憲法20条3項の 宗教的活動にはあたらず 政教分離の原則に 違反しない という結論が出されました。

この事例のポイントは 政教分離の原則の適用基準は 目的効果基準であり 目的効果基準とは 行為の目的が宗教的意義を持ち、その効果が宗教に対する援助、助長、促進又は圧迫、干渉等になる かどうかで 宗教活動に当たるかを判断し 政教分離の原則に違反しているかを見極める ということです。

それでは 今回は ここまでにします。
次回は 小泉首相の靖国神社参拝をめぐる裁判所の判断について です。


文責 賢四郎