城下町として栄えた臼杵の町並みは歴史と伝統を感じさせる穏やかな美しい場所だ。

 今年創業156年を迎えるフンドーキン醤油株式会社代表取締役社長小手川強二氏(63)は味噌・醤油という伝統ある日本の食文化を革新的な経営戦略でさらに価値あるものとして市場に送り出しヒットさせ続けるトップマネジメントだ。

 

 〇市場経済を見る鋭い目

 大学で経済学を専攻し銀行に勤務していた氏が郷里へ帰り味噌・醤油という伝統的な発酵の世界でどのような経営を展開させたのだろう。

「入社当時は日本人の食嗜好が西洋化しつつあるときで味噌・醤油のマーケットは縮小していました。当時社長だった父は商品開発に力を入れ次々とアイディアを出して良いものを作れば売れる”“頑張れば売れると言う気概だったんです。確かに社内も活性化したのですが、私はそれをどうすれば売れるかという方向性を社員全員が共有することを重視しました」会社の方向性を示して、それを全員が共有し同じ方向に向かうこと。具体的には経営計画書を毎年魂を込めて作成し社員に方針を徹底すると言う。まさに、何を(what)売るかだけでなく、どうやって(how)売るかを明確に示したマネジメントだ。父親のアイディアと物づくりの才能から生まれた作品をマーケットに商品としていかに売り出していくかを優れた経営理念と戦略で展開した。

 

 〇人材を生かしマネジメントする

 味噌や醤油のマーケットがある程度限られた時に新たな商品として開発したドレッシングは発売1年目に10億円近く売れたという大ヒット商品だ。わが家の冷蔵庫にもこのドレッシングは大きなボトルで常備されている。味噌・醤油といった発酵の世界は日本の伝統でありいわゆる「匠」の世界。そういった職人さんたちとドレッシングや麺つゆなどのブレンドという商品開発や製造技術を融合させる苦労はなかったのかと聞いた。「発酵のプロである職人さんたちは匠ですから当初、苦労はありました。けれど3,4年してその壁を乗り越えました。今では発酵だけでなく、ブレンド指向の人も多く入社していきますよ。」モットーは「コツコツと続けること」。「開発した商品が売れると同じような商品が他社から出てくる。うまくいっているときもあれば挫折するときもある。しかし、あきらめないで地道にコツコツと努力しながら再びチャレンジする。すると次のチャンスが必ず訪れる。これを大切にしています。」チャンスはじっとしていて巡ってくるものではない。常に世の中の流れや人々の生活に高くアンテナを張り続けることだ。その努力を氏は決して忘れない。

「仕事はマーケットに対してするもの」と人と会うこと現場を見ることが重要だと自分で出かけていくことを心がけている。そのためにも人と人との関わりを大切にし、現場第一主義でコミュニケーションを欠かさない。だからこのリーダーの元では皆、同じ目標に向かって日々努力を続けるパートナーシップが機能しているのだ。

将来の予測が困難な現代社会において組織そのものの変革スピードが求められている。新しい考え、新しい価値観を模索しながらも守るべき伝統の価値をしっかりと見据えている。

小手川氏には企業人としての品格を感じる。それは高い知性と豊かな教養に裏付けられていることはもちろん、自社や共に働く者たちへの熱い思いや郷土を誇る温かな心がその穏やかで上品な表情から湧き出ているからかもしれない。