■■【経済の読み方】 2013年 4月上旬を時系列的に見る
時代の流れを時系列的に見ると、見えないものが見えてきます。NHKの放送や新聞・雑誌などを見て、お節介心から紹介しています。◆ 電力自由化はメリットを発揮するのか? 3/7 2013/04/10
NHKの嶋津八生解説委員が電力自由化について解説していましたので、その解説をベースに私見をご紹介します。
前回は、日本の電気料金は先進国で最も光学であることを紹介しました、今日は日本政府がどのように電力自由化を進めようとしているのか、嶋津解説委員の解説をご紹介します。
◇第一回 世界一高額な電力料金
◇第二回 日本政府の電力自由化案
◇ 送配電会社と民間放送ネットワークの類似
発送電分離が確立すると、各地域に作られる送配電会社は地域内に安定的に電力供給することが求められます。
そのために新電力の発電設備から供給される電力についてもすべて目配りした上で、基本的に域内の電力の需要と供給が一致するように、需給の安定に努めることになります。そして地域送電会社を全国レベルで統括し、全体の需給安定を図るのは、この「広域系統運用機関」ということになります。
テレビの民間放送局がネットを作るように、他の地域送電会社との連携が必要となります。
嶋津解説委員の解説に戻りましょう。
電力自由化のこれまでの経緯をたどりますと、日本も実は1990年代から世界的に自由主義の経済学が全盛を極め、電力の自由化を進めてきているのですね。自由化を進め競争を促進すれば、消費者や企業は安い電力を買う事が出来るようになるという論理からです。
その結果、大口ユーザーは、地元の電力会社ではなく、入札によって、一番安い価格を提示した新電力から買うことができるようになりました。しかし、現実には地域電力会社の競争力が強く新電力の獲得シェアはわずか4%程度にとどまっているのです。
家庭用などの小口のユーザーに対しては自由化が見送られ、選択の余地はありません。ただし、売電ができるようになったことは、ソーラー発電などを促進する一助になりました。 <続く>
◆ 電力自由化はメリットを発揮するのか?<2> 2013/04/09
NHKの嶋津八生解説委員が電力自由化について解説していましたので、その解説をベースに私見をご紹介します。
前回は、日本の電気料金は先進国で最も光学であることを紹介しました、今日は日本政府がどのように電力自由化を進めようとしているのか、嶋津解説委員の解説をご紹介します。
◇ 日本政府の電力自由化案
電力自由化をめぐる政府の基本方針では、5年後から7年後を最終ゴールに、電力の小売りの完全自由化、発送電の分離を目指すとしています。
ただそのゴールをいきなり目指すのではなく、改革を3段階にわけ、電力制度を定めた電気事業法も順次改正し、段階的に自由化を進めていくとしています。
第1段階として、2年後の2015年をめどに全国の電力の広域的な需給計画を立て、地域をまたいだ電力の需給調節に責任を持つ「広域系統運用機関」がつくられます。
第2段階の2016年をめどに電力の小売りの全面自由化が実施され、家庭も含めて、どこの電力会社からでも電気が買えるようになります。
第3段階は、2018年から2020年をめどに、料金規制の撤廃―つまり家庭用の電気の料金についても、各電力会社が自由に決めた値段で売ることができる。逆に消費者の立場からすれば、各電力会社の提示する多様な料金メニュを見比べて選べるようになります。
私見では、あまりにもテンポが遅すぎるように思えます。
第3段階に入ってようやく、既存の電力会社は、それぞれが社内に持っている送電部門を切り離して別会社を作るという、いわゆる発送電分離が実施されるのです。
◆ 電力自由化はメリットを発揮するのか?<1> 2013/04/08
NHKの嶋津八生解説委員が電力自由化について解説していましたので、その解説をベースに私見をご紹介します。
◇ 世界一高額な電力料金
戦後、日本の電力供給体制は国営から民間へと経営が移されました。しかし、経費が高まれば、それを価格に転嫁できるという仕組みから、先進国では世界で最も高い電力を日本国民は使わされています。
福島第一原発自己では、東電の古い体質が浮き彫りになりました。電力料金を上げるのは「義務」であるという暴言さえ発せられました。しかし、それがあまり話題にならなかったことも不思議なことです。
大手電力会社による「地域独占」と、「発送電一貫体制」の弊害が、欧米の「電力の自由化」動向で目覚めさせられた感じで、日本政府も要約動き始めました。
「電力システムに関する改革方針」がようやく閣議決定し、電気事業法が改正の方向に向かった動き出しました。
◆ ガソリンエンジンはいつ消滅するか? 3/3 2013/04/07
民間の調査会社の予測によりますと、2030年においてガソリンや軽油エンジンの車が全体の90%近く走っているといます。
◇ 技術革新が夢の自動車を作る
私がこの予測に対して疑念を持っているのは、技術革新が読み込まれていないことが最大の欠点と考えています。
例えば高速道路ですが、今とは全然異なり、高速道路はリニアモーターで自動車が走るようになると考えます。リニアモーターといってもリニア新幹線のような磁気浮上式ではなく、フラット式のリニアモーター駆動で走る方法です。
リニアは、道路の混雑状況に合わせてプラスとマイナスを切り替え、スピードは混雑状況によりことなります。運転手がスピードをコントロールするのではなく、道路が自動車を制御します。
すなわち、運転手は目的地と、そのルートを設定するだけで、運転するという負荷が大幅に軽減されます。
言うなれば、道路にリニアが埋め込まれていて、走る自動車はハイブリッド車です。ハイブリッドといってもガソリンと電気のハイブリッドではなく、リニアと電気のハイブリッドです。
高速道路はリニアで走りますが、通常道路は電気で走ります。
それでは、大きな電池が不可欠と指摘されそうですが、充電はマイクロ波を使って行いますので、一時的な蓄電能力をもった電池を搭載していれば良いのです。
では、ガソリン車はいつ頃なくなるのでしょうか?
おそらくガソリン車は、原油やシェールガス・オイル他が枯渇するまでなくならないでしょう。ただし、乗用車ではほとんど利用されず、馬力が必要な大型トラックや工事車両などに限定されると思います。
はたして、この予測がどの程度当たるでしょうか?2030年まで私は存命していませんので、私自身では確認できません。読者の皆さん、私の代わりに、私の将来予測が正しいかどうか、確認して下さい。
◆ ガソリンエンジンはいつ消滅するか? 2/3 2013/04/06
民間の調査会社の予測によりますと、2030年においてガソリンや軽油エンジンの車が全体の90%近く走っているといます。
私自身は、この調査には相当疑問を持っています。
◇ ガソリンエンジン車が存続する理由
では、なぜ電気自動車などが増加せず、化石燃料を燃やす現在の自動車が優勢なのか、この調査社のその理由を聞きたいところです。
その理由としては、充電設備の整備などが課題となって電気自動車の普及が伸び悩むということが挙げられています。
一方、ガソリン車などエンジンの燃費性能が向上していますし、アメリカでシェールガス・オイルの開発が進んでいますので、ガソリンの価格が下がることを挙げています。
私がこの予測に対して疑念を持っているのは、技術革新が読み込まれていないことが最大の欠点と考えています。
◆ ガソリンエンジンはいつ消滅するか? 2013/04/05
環境意識が高まるにつれハイブリッド車や電気自動車の普及が期待されます。このまま行くとガソリンエンジン車はいつかは消えてしまうのでしょうか、それはいつ頃なのでしょうか、という疑問が湧きます。
NHKの報道によりますと、この疑問に答えようと調査会社の富士経済が、自動車メーカーや消費者への聞き取りなどを基に予測をまとめました。
◇ 2030年予測ではガソリン車が90%も存続
2030年に世界の自動車販売数は年間で1億2400万台になるといえます。これは、現在の販売台数に対して50%以上の伸びに相当します。
このうち、電気自動車やモーターとエンジンの両方を使うハイブリッド車の販売台数は合わせて1364万台といいます。これは総販売台数に対して11%です。では、残りの90%弱は、どのようなエンジンの自動車なのでしょうか。
この予測によりますと、ガソリンや軽油で走るエンジンの車は1億1036万台となり、全体の89%に上るという、意外な数値となっています。
私自身は、この調査には相当疑問を持っています。 <続く>
◆ 黒田日銀総裁による初の金融政策決定会合 2013/04/03
3~4日にかけ、黒田総裁の下で初めてとなる金融政策決定会合が開催。
デフレから脱却するため2%の物価目標を実現することを掲げています。2年程度での実現のための舵取りは非常に難しいでしょう。
そのために、黒田総裁が採ったのは、償還までの期間がより長い国債を積極的に買い入れることです。新しい金融緩和の仕組み作りが議論されます。
これまで償還までの期間が3年以下のものに限って国債の買い入れを行ってきました。それを、長期国債にまで対象を広げて、緩和効果を高めようというのです。
株式を組み込んだETF(上場投資信託)などの買い入れを増やすことなどを検討します。
また、金融緩和のためと市場に必要な資金を安定的に供給するために設けている2つの国債買い入れ枠組みを一本化します。日銀が財政の肩代わりをしないよう設けている自主的なルールについても見直しを検討する方針です。
これらの多くに批判論もあり、とりわけ最後に記述したことは、赤字国債とは別枠の国債と安倍総理が言っている、国民だましの言葉遊び的な政策を実現するための方策と言えます。
◆ 大型通商交渉と日本 2013/04/01
NHKのテレビ番組「時論公論」で百瀬好道解説委員が、TPPなど大型通商交渉に関して日本のあり方を解説していました。興味を覚えましたので、そのポイントをまとめてみました。
◇1 大型通商交渉の規模
「スケールが大きく複雑な通商交渉を同時並行的に進めていく時代を迎えています。大通商交渉時代」という表現をしていましたがTPP、FTAなどが盛んに関係国間で交渉中でしたり、これから交渉が始まろうとしたりという昨今を上手に表現していると言えます。
日本、中国、韓国の3カ国では、FTA(自由貿易協定)の第1回目の交渉が始まりました。日本は、アメリカが主導するTPP(環太平洋パートナーシップ協定)への交渉参加も表明しています。
いま日本が取り組む予定の大型交渉の対象地域における経済規模と世界全体のGDPに占める割合から見てみますと、その交渉の大きさを理解しやすいでしょう。
TPP 約40%
EU 約34%
ASEAN 約30%
日中韓 約20%
上記は日中韓の20%は、ASEAN+6と重複します。また各数値に日本のGDPが重複しているので、これだけで100%を超えてしまいます。その点はこの数字を読む時に誤解のないようにお願いします。
◇2 大型通商交渉を理解する3つのポイント
いずれも世界有数の経済大国や地域が相手の多国間交渉である点が、これまでにない大きな特徴です。日本にとって一連の交渉が持つ意味を、百瀬委員は3点指摘しています。
第1に、韓国との競争上の不利を解消すること
TPPと日EU交渉が、韓国との不平等とも言える通商関係を少しでも解消しようという取り組みです。たとえばアメリカ向けの自動車は、数年来に米韓では関税がゼロになります。
二つ目は、世界をリードする新しい貿易ルール作りに加わること
人やモノ、お金や情報が世界を駆け巡るようになり、ルール作りの重点は、従来の関税引き下げから投資の規則や知的財産権の保護といった領域に移りつつあります。
三つ目は、アジア太平洋地域の成長と自由化を拡大すること
TPPやASEAN+6、日中韓のFTAは、世界の成長センターと言えます。この地域で、自由化によってお互いの連携を強め、成長を加速させる枠組み作りの意味を持っています。 <続く>
◇3 TPP参加反対派の主張
貿易自由化交渉の推進は、安倍政権が6月にまとめる成長戦略の柱のひとつです。
いずれの交渉の中でもとりわけTPPは重い経済的意味を持っています。
TPPは、日米関係そのものにも関係しますし、ほかの交渉に与える影響の大きさからも、TPPは日本国民の関心を高めています。
では、なぜ自民党内ですらTPP参加の賛否が分かれるのでしょうか。
関税撤廃が原則で、あらかじめ例外品目を想定しているほかの協定と比べて、自由化の水準が高いからです。
輸出産業や大企業にはメリットが期待できますので、賛成します。
一方、これまで国内産業保護や規制で守られてきた農業や一部の産業では、安い輸入品の流入やアメリカ流の規制緩和を押しつけられることが懸念されるので反対しています。
日米首脳会談で「聖域なき完全撤廃が前提ではない」ということが確認されたとはいえ、米をはじめとします日本の主な農産物における関税撤廃が例外として認められるかどうかは、非常に疑問な部分です。
しかも、交渉開始からすでに3年も経っているTPP交渉ですが、今から日本が参加してルール作りに間に合うのかということも懸念材料です。
◇4 ルール作成に間に合うのか
百瀬委員は、次の2項に注目して解説していました。
1.後発参加でルール作りに間に合うのか
2.聖域なき完全撤廃が前提ではないというのは本当に大丈夫か
まず、ルール作りに間に合うかどうかの懸念から見てみましょう。
TPP参加国は、2013年年内の決着を目標に、10月までに大筋合意を掲げています。日本の交渉参加時期は、アメリカ政府と事前協議や議会に通告する手続きもあって、今の時点では9月になってしまいます。すなわち極めて短期間の交渉にしか参加できないのです。
しかし交渉関係者によりますと、年内決着は難しいと言われています。スケジュールが遅れれば、日本の意向を取り入れられやすくなります。
関税の削減問題のほか、日本が関心を持つ知的財産権の保護といった重要分野の交渉がこれからのテーマですので、遅い参加とはいえ、まだ交渉できる余地はあります。
スケジュールがらみで、7月に臨時の交渉を行うことも検討されています。日本の参加問題については、閣僚級協議の開催案があり、この場でゴーサインがでますと、7月から交渉に参加する可能性もでてきます。
日本にとって、時間的に厳しいことには変わりがなく、どんなルールに重点を置くのか入念な交渉準備が必要です。
◇5 日本農業を守れるのか
百瀬委員は、次の2項に注目して解説していて、前回はルール作りに間に合うのかについてご紹介しました。
1.後発参加でルール作りに間に合うのか
2.聖域なき完全撤廃が前提ではないというのは本当に大丈夫か
上述2項目の農産物を関税撤廃の例外として勝ち取れるかという問題です。
安倍総理大臣の日米会談で「聖域なき完全撤廃が前提ではない」という確認しました。それを受けて、自民党は米や麦など5品目の関税を堅持することを政府に求めています。
これまでの交渉では、関税の撤廃について、原則は固まっています。しかし、具体的な品目や例外の扱いはほとんど議論されていません。
アメリカが、オーストラリアなどから国内の農業を守るために一部品目の関税を維持したいという強い意向を持っています。
このような現状を見ますと、日本が例外品目を確保できる可能性はあると考えます。しかし、すべての品目を守りぬけるかどうかということは言えません。
百瀬氏は、上記のように解説していますが、直上の部分を自民党はぼかしながら国内世論を味方につけようとしています。
◇6 TPPのメリットと懸念
前回、日本の農業を守れるのかという視点での百瀬委員の解説を説明しました。
農業など個別分野の利害得失も確かに大切ですが、それだけに囚われて、TPPが持つ戦略的重要性を忘れてはならないという点では、百瀬委員に同感です。
以下に、百瀬委員の解説を続けます。
TPPは、将来的に中国が加入する事を想定した枠組みです。
アメリカは、中国を異質な経済システムの国とみています。国営企業が大きな力を持っていたり、知的財産権に関して保護をキチンとすべきという意識が希薄であったりすることがその背景にあります。
TPPに中国を巻き込むことは、経済圏が拡大するというメリットがありますが、アメリカは、中国を敵視して封じ込めるのではなく、中国をもっと開放的な国に導く手段と位置付けているのです。そうした意味でのルール作るためには、アメリカは日本を巻き込むことが重要と考えているのでしょう。
それだけにかかわらず、TPPが他の通商交渉への影響力の大きさがあります。
日本がTPPに前向きの姿勢を示した事で、日本との交渉に乗り気ではなかったEUや中国が態度を変えました。
自由化の度合いが高いTPPに日本が参加することで、日本はそれを切り札にしてEU、中国、韓国との交渉に有利な材料として利用できるのです。
百瀬委員の解説を読んでいて、TPPのルール作りでは、日米の協調というか相互理解が必要なことを改めて考えさせられました。
一方で、日本政府の交渉力の弱さという不安材料があります。もし、アメリカが力で不合理な要求を押しつけて来るようなことがあれば、きっぱりと突っぱねるべきです。日本政府は、経済の原則とルールに則した交渉姿勢を貫けなければTPPへの参加は厳しいモノになるでしょう。
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