江國 香織
落下する夕方

この作品は私の体験とシンクロした、深い喪失感を哀しいほど見事に表現したものである。


喪失感というの哀しみとは違う何か。

そう思った。


この作品を読んでいた頃、彼は元気で夏の光の中のはじけるような笑顔と開放感にの中にいた。

次の年の春、桜の花がほころぶ頃彼は交通事故でこの世を去った。

桜を見ずに。


突然の義弟の死。


彼の49日がすまないうちに父が突然死んだ。

病気だったらしいが病院にも掛からないうちに。

何も言わず。


いってみると家で死んでいた。


二つの突然の死と、この作品の哀しみ。

どこか似てるような気がして

(それは全然かかわりのないしだけど)


この作品は二つの死を。

二つの死はこの作品を思い出させる。

これから先もずっとそうなんだろうな。

実はあれから、この本を読み返す勇気をまだ持てないでいる。