三日三晩、制作に打ち込んだ。
久しぶりの本気モードだった。
精神の状態が刻々と変わることに気付く。
100枚を越えた頃、 寝不足もあってか
精神崩壊しそうな気に陥った。
途中紙を買い足しに行った。
3×6尺(約90cm×180cm)という、
一枚の紙の中では一番大きな部類の作品。
使用した紙は超級紅星牌。 一反(50枚) ¥25000という超高級品。
結局200枚を消費。
墨は、墨運堂百選墨「蒼堂墨」
筆も今年四月に新たに買った一級品。
二級品なのは俺の腕だけ。
焦りや不安の中から、
ふっと力が抜けたのは170枚を越えた頃。
でも、作品になったかどうかはわからない。
これまで気付かなかったことに気付く。
見えなかったものが見える。
動ききれなかった所が動ききれる。
自分の呼吸を感じる。
紙、一枚の重み。
値段のことじゃない。
たった紙一枚。遊んでしまえば瞬間に終わる一枚。
そこに、自分の全てを載せようとするほんの20秒。
一枚の重みがどれほどのものか、感じられた。
まだまだ俺は、駆け出しでしかない。