雨上がりの多摩市立陸上競技場。

前節はINACを下し、3勝1分の負けなしで首位に立つベレーザと、1勝1分2敗と、浮上のきっかけをつかみたい伊賀の一戦を取材してきました。

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【ベレーザ】

     田中美南
     籾木結花
長谷川唯      上辻佑実

   中里優 阪口夢穂

有吉佐織 村松智子 岩清水梓 清水梨紗
     山下杏也加

ベレーザは右サイドに上辻選手が先発。誰が出ても安定したサッカーが出来るのは強みですね。



【伊賀】


 ローレン・ボハボーイ 杉田亜未
尾田緩奈         小川志保

    那須麻衣子 櫨まどか

畑中美友香 大橋実生 宮迫たまみ 武田ありさ
      久野吹雪

伊賀はここまで4試合を終えて奪ったゴールはわずか「1」。今季、期限付き移籍で加入したローレン・ボハボーイ選手が2試合連続スタメン。得点力に期待が高まります。




パスワークで圧倒するベレーザに対し、高い位置からの守備を持ち味とする伊賀がペース配分を考えつつ、いかに焦れずに粘り強く守れるか、という展開になるのではないかと予想していましたが…
序盤から伊賀のハイ・プレッシャーがはまり、ベレーザにリズムを作る余裕を与えません。特に1トップの田中選手に対しては常に数的優位を作り、球際も厳しく仕事をさせません。

その流れから、ファーストシュートは伊賀。
3分、左サイドのスローインから、畑中選手のクロスを小川選手が落として杉田選手が走り込み、岩清水選手のクリアを櫨選手がミドルシュート。ボールは浮いてしまいます。

9分 ベレーザ 右サイドから上辻選手のクロス。ファーサイドから有吉選手が飛び込みますが、久野選手がキャッチ。

13分 伊賀 GK久野選手がカウンター気味のロングフィードを送ると、ボハボーイ選手がヘディングで流して杉田選手がGKと1対1に。前がかりになったベレーザの裏をつく理想的な形でしたが、オフサイドの判定。

ベレーザは細かいパスワークで交わしつつも、裏を狙うロングフィードも織り交ぜて徐々に押し込みます。

25分 ベレーザ 左サイドで回しながら前線とのタイミングを図り、長谷川選手のスルーパスは飛び出した籾木選手へ。逆サイドを狙った技ありのシュートでしたが、久野選手が目一杯腕を伸ばしてキャッチ。

31分 ベレーザ ベレーザの波状攻撃。左サイドで仕掛けた有吉選手が縦に抜け出してクロスを入れ、クリアボールを長谷川選手がミドルシュート。しかし、伊賀DF陣も体を張って十分な空間を与えません。

33分 ベレーザ 左サイドの有吉選手が入れたパスを籾木選手が落とし、阪口選手がミドルシュート!ゴール右に逸れますが、伊賀のプレッシャーをかいくぐるベレーザの攻撃が徐々に威力を発揮し始めます。

40分 ベレーザ スピーディなパス回しで、ゴール前の鉄壁をなんとかこじあけようとするベレーザ。上辻選手のミドルシュートはわずかに上へ。

42分 杉田選手の落としを受けたボハボーイ選手のシュートは、距離が遠く、GK山下選手が難なくキャッチ。

43分 ベレーザ 有吉選手のクロスを上辻選手が頭で折り返し、田中選手が飛び込みますが、久野選手が高く飛んでしっかりキャッチ。

44分 ベレーザ 清水選手が長い距離を走ってラインを割りそうなボールをギリギリで残し、クロス。ゴールにはつながりませんでしたが、清水選手のスピードと諦めない姿勢がチャンスを生んだ場面でした。

45分 伊賀 CK。杉田選手が蹴った高いボールをボハボーイ選手が高い打点でヘディングで叩きこみ、伊賀が先制!⚽️0-1

少ないチャンスを確実に決めた伊賀が、1点リードして後半へ。

HT ベレーザ 上辻佑実→隅田凛

後半は、隅田選手を投入して攻撃の枚数を増やしたベレーザが猛攻に出ます。

50分 ベレーザ 有吉選手のパスをバイタルエリアで受けた籾木選手が細かいタッチで3人を交わしてシュートまで持ち込みますが、囲まれてシュートが弱くなり、GK久野選手がキャッチ。

52分 ベレーザ 有吉選手が左サイドで、ボールをすらしながら相手の股を抜くテクニックを見せながら崩しますが、伊賀も人数をかけてクリア。
パスをつなぐサッカーの中で、あえてパスコースがある中でも1対1を仕掛けたこの有吉選手のプレーについて、試合後に本人に話を聞いたところ、こんな話をしていました。

「前半は伊賀のブロックが堅くて、私たちが狙っている「間」にボールが入らなかったので、前半は割り切って相手を動かしながら、ボールを動かしていこうと。そのうち相手も運動量が落ちてスペースができてくるだろうと仮定していたんです。前半は球離れが良すぎるかなと感じていたので、まずは自分のマッチアップの選手に仕掛けることで相手に、1対1もあることを印象づけようと。そうすれば、もう少し間が空いて、籾(木)ちゃんとか(田中)美南など、自分たちにとってゴールに近い選手にボールが入りやすくなるかなと考えました」

そういった局面の駆け引きも、同点ゴールを呼び寄せたのでしょう。

53分 ベレーザ 左サイドを長谷川選手と中里選手と長谷川選手で崩し、有吉選手のクロスに阪口選手が飛び込みますが、ヘディングはミートせず右に逸れます。

63分 ベレーザ 左サイドの流れから得たCK。隅田選手のキックに、後方から飛び込んで来たのは阪口選手!4試合連続?となるゴールでベレーザが追いつきます。⚽️1-1

追いついたことでさらに落ち着いてゲームを進められるようになったベレーザ。1分後には、田中美南選手のスルーパスに籾木選手が抜け出しますが、シュートは久野選手の正面。

73分 伊賀 尾田緩奈→福丸智子(福丸選手は元ベレーザで古巣対決)

80分 ベレーザ 左サイドで有吉選手がDFを背負いながらも鋭いグラウンダーのクロスを送ると、ゴール前で混戦になり、こぼれたボールを中里選手がミドルシュート!
左足から放たれた外回転のかかったボールがゴール左隅に刺さり、ベレーザが逆転!⚽️2-1

81分 櫨まどか→竹島加奈子

84分 伊賀 ローレン・ボハボーイ→園村奈菜

86分 ベレーザ 右サイド中央よりの位置で得たFK。籾木選手がファーサイドを狙ったボールを送り、阪口選手が折り返しますが、久野選手が飛び出してキャッチ。

88分 伊賀 裏に抜けた園村選手がマイナス気味に折り返し、福丸選手のミドルシュート。ベレーザ村松選手がクリアしたボールを右サイドの小川選手がクロス。はね返ったボールを那須選手がダイレクトで打つも、枠の上へ。

89分 ベレーザ 有吉選手のクロスはクリアされますが、こぼれたところに右から清水選手が走り込み、キックフェイントを織り交ぜたクロス。試合終了間際になっても両サイドバックが上がれる運動量を見せたベレーザ。


ここで試合終了。
ベレーザが4連勝で首位をキープしました


花花花花花


前半の伊賀のゲーム運びは見事でした。後半は無理をせずに奪いどころを定めて、GK久野選手まで使ってピッチを広く使って時間をコントロールしつつ追加点を狙いに行く意図も見えましたが、ベレーザは時間とともに少しずつマークが甘くなったところを見逃しませんでしたね。4試合連続ゴールの阪口選手の決定力はさすがです。CKを右足インスイングの絶妙なボールで合わせた隅田選手のボールも素晴らしかったです。他にも上辻選手、籾木選手など正確なボールを蹴れるプレスキッカーがいて、セットプレーも武器の一つ。

ベレーザはボールを持っていない選手の縦への上下動が多く、ポジションを流動的に変えてチーム全体での「マークを外す動き」があり、さらに個々の「マークをはがす動き出し」の技術も高いので、特に攻撃の時はピッチ上に11人以上いるように見えました。

中でも印象に残ったのは、長谷川選手のチャンスメイク。ボールを受ける前に首を振って周囲の状況を確認し、常に相手の先を取る判断の速さがあり、一方で、その判断を一瞬で変えられる技術も。パスを受けてからアイデアの引き出しを一気に開けて、そこから最善のものを一瞬で選び出せる力が、156cm46kgの小柄な体格を補ってなおあまりある「上手さ」だと思います。
ボールを持った時の視野について長谷川選手に話を聞くと、こんな答えが帰ってきました。

「まず周りを見ておいて、味方とのタイミングが合わなかったら、その後の動き出しを見て、タイミング次第で判断を変えています。右サイドの(清水)りさの方まで見ながら、そうすると、左側はなんとなく見えている(視野に入っている)んです。遠くを見ておいて、いいタイミングが手前で動き出していたらそこを使うという感じです。『中に入りながら逆に出す』プレーは結構よくやっています。相手のディフェンスも逆サイドに体が向いているので、裏を取りやすいからです(昨年と比べて、一番変化したと感じることについて)簡単にボールを失わなくなったとは感じています。あとは、体の使い方もあります。当たられても簡単に倒れないようにはなりました。それに、有(吉)さんとの連携も年々よくなっているなと思います。メンタルは今までも、相手がどこであろうと気にせずやっていましたし、それほど変わっていません」

それでも、昨日の試合は
「サイドを崩しきれていない印象があったので、まだまだやれるし、(自分の出来は)微妙でした」
と、自己評価は厳しかった長谷川選手。冷静に、厳しく自分を評価できることも”伸びしろ”ですね目

逆転シュートを決めた中里選手は、

「夢穂さんだったら相手に当てないですんなり入れていたと思います。(阪口選手の同点ゴールについて)本当に、ありがとうございます、という感じで、神様みたいな存在です。夢穂さんが『優のやりたいようにやっていいよ』と言ってくれるから、伸び伸びプレーさせてもらえています」

と、いつもながら謙虚でした。若い選手たちはいつも、岩清水選手や阪口選手、有吉選手など経験のある選手への憧れをストレートに表現していますね


伊賀は、左サイドバックの畑中選手が光りました。
19歳と若く、166cmの高さも魅力ですが、技術のある上辻選手とのマッチアップでも、しっかり顔を上げてキープできる冷静さと、プレッシャーの中でも正確なロングフィードで攻撃の起点を作っていました。
前半の守備について

「今日はしっかり、前線が追ったら後ろもついていこうと、距離感を大切にすることを意識したら前で奪えることも多く、カウンターで仕掛けられることができました」
と一定の手応えを感じていたそうです。ラマンガ国際大会やU-20の合宿にも呼ばれていますが、

「貴重な経験をさせてもらう中で、良い自信はついてきたかなと思います。同年代はレベルも高くて上手い選手がたくさんいるので、そういう場に行って、刺激をたくさん受けます。海外の選手は速くて強いですが、そういう相手に自分の力が通用したら、それは国内でも通用する部分だと思うので、そこは自信を持ってプレーしています。なでしこリーグではマッチアップする選手はなでしこの選手や各年代の代表など、素晴らしい選手ばかりですが、どんな相手にも自分の力を100%出し切って抑えられるようにしたいです」

と話していました。お母様は元日本女子代表選手でもあるサラブレッド。今後が楽しみですねにひひ

前線で攻守の起点となった杉田選手は、試合を振り返ってこんな話をしていました。

「前半はプレッシャーをかけて奪ってから攻撃につなげられるシーンが多く、それが続けば良かったんですが…後半バタバタしてしまったのは悔しいです。伊賀の持ち味の守備は崩すことなく、修正していきたいと思います。(攻撃については)個人としても、パス回しをしながらゴールに向かっていくのが好きなので、それを少しでもやっていこう、ということは練習の中でも発信しています。ただ、チームとしてもいろんな選手がいて、つなごうという選手もいたり、この時は(前線に)蹴った方が良いと考える選手もいるので。それを合わせる難しさはありますが、チームメイトに自分の考えをより具体的に伝えていくことが大切だと思っています。言ったからには自分がやらなければという責任感も生まれますが、私はその発信がまだ足りないし、まだまだメンタル的にも、自分の考えを貫けるようなプレーを見せられていないので。信頼を得られるように、まずはプレーで結果を出していきたいです」

なでしこジャパン招集経験もある杉田選手。
レッズレディースの猶本光選手も、なでしこジャパンに参加した中で自分から発信していく力がもっと必要だと感じたと話していました。

ピッチに入れば年齢は関係ないものですが、そこを精神的に乗り越えていくことも、若い選手たちにとっては一つの命題かもしれません。


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他会場はAC長野が新潟を3-1で下し、コノミヤとジェフが1-1のドロー。湯郷ベルはレッズレディースに1-0で勝利。

順位はこちらです花