もしかしたら
何か勘付いていたのかも
知れない・・・
お店に来るなんて・・
突然
私たちの前に
現れた彼――
「ごめん・・
連絡する余裕もなくて・・・
改めて
待ち合わせするより
来た方が
早いと思ったんだ・・」
言いながら
隣に立つ
ジェジュンに
軽く会釈をした。
「・・初めまして
オーナーの
キム・ジェジュンです・・・」
それを受けて
ジェジュンが
挨拶をして
ユチョンも――
「初めまして。
パク・ユチョンです。
妻がいつも
お世話になっています・・」
”妻”って言葉が
胸を刺す。
そうだね・・
ジェジュンの前でも
私はこの人の
”妻”なんだ・・・・・
「いえ・・こちらこそ・・
もう上がっていいよ?」
顔色も変えずに
ジェジュンが
私に言った。
「え・・でも・・」
「いいです。
もうすぐ
閉店ですよね?
終わるまで待ってます。」
ユチョンが
ジェジュンに答えて
今度は私に――
「外の車で
待ってるから・・・」
堂々とは
見れないのか
伏し目がちに伝えた。
「うん・・・」
ユチョンが静かに
去って・・・
「閉店の音楽
鳴り始めたら
帰っていいから・・」
「・・・うん・・・」
ジェジュンも
私のそばを
離れた。
去って行く二人――
視線だけで
追いかけた。
私は何してるんだろう・・・
閉店時間が
来た時
ジェジュンの
姿はお店になかった。
もう・・帰ったのかな・・・
お店を出たら
車の前で
ユチョンが
タバコを吸って待っていた。
「寒かったでしょ?
中で待ってて
くれれば良かったのに・・」
「タバコの匂い
嫌いだろ?」
優しいんだね・・
私のこと
気にしてくれるなんて・・
でも――
「風邪
引きやすいんだから
気をつけてよね・・」
私のことより
自分の心配した方が
いいんじゃない・・
コートの開いた
胸元をきゅっと閉めて
私は助手席に
乗り込んだ。
しばらくして
残りのタバコを
吸い終わった
ユチョンが
乗り込んで
車は走り出した。
外で吸っても
タバコの香り・・
残ってる・・・
私好みのお店で
私好みの料理を
注文してくれる。
私のことを
わかっている人―――
「美味しい?」
って優しい顔して
甘い声で聞く・・
ずるいよ・・・
夫婦の危機に
そんな顔・・
すべて
忘れて
”美味しい”って
微笑み返したくなる・・
でもダメ。
そんなに簡単に
ユチョンのこと
許せない・・
それに・・
「あのオーナーが
大学の友達?」
「うん・・」
「・・良い人そうだな・・」
「うん・・・」
「・・・」
気まずい雰囲気を
なくそうと
ずっと話していた
ユチョンが
黙った。
黙々と
デザートまで終わって
何も話せないまま・・
話し合うにはまだ
早すぎたのかもね・・
「帰るね・・
もうちょっと
友達のところに居るから・・」
ユチョンのこと
許せないのと
このまま
ジェジュンから
離れることが
出来なくなっている自分・・・
両方だった・・
「〇〇・・・」
「気持ちが
整理できるまで
帰れない・・」
いつになく
頑なな私――
ユチョンは
もう気づいたの?
「・・・どこにいるの?
友達って?・・」
「・・大学の・・友達・・
また連絡するね・・・」
場所は言えない・・
お店の近くの
駅まで
送ってくれた。
シートベルトを
外して
出て行こうとする
私の腕を
掴んで
しばらくぶりに
ユチョンが口を開いた。
「ごめん・・
すぐに許して
欲しいとは
言わないけど・・・
・・戻って来てくれないか・・」
もう
別れたからって・・・
戻って来るのは
ユチョンの心で
私はずっと同じ場所に
居たのに・・・
待ってたのに・・・
待ち過ぎて
空っぽになった心の半分・・
今は埋まってる。
それはユチョンじゃないけど・・
もう半分も彼で
埋められたら
私・・
幸せになれる気がする・・・
「今は・・戻れない・・
考えたいの・・・」
ユチョンは
難しい顔して
黙ってしまったけど・・
「行くね・・」
私はドアに
手をかけた。
「・・戻って来て・・」
待ってる―――
掴まれた腕は
すぐに解けて
私は車を降りた。
このまま行けば
戻りにくくなること
わかってる・・・
どこに行くのか
気付いている
ユチョンの
濡れた視線が
心に
突き刺さる・・
それでも
いつだって
変わらない
ジェジュンの
優しさに
私は惹かれて
駅の中に
入って行く。
ジェジュンが
待ってる気がした。
ジェジュンが・・好き・・・










