〇〇さんには
断わったのに
俺の知らないところで
仕事を手伝っていた。
ピンチを救って
くれたことには
感謝してる・・・
だけど――
「〇〇さんの
力は借りないと
言ったはずだけど。」
俺は冷たい言葉で
彼女を突き放した。
一緒に働くことは
出来ないんだ。
なのに
彼女は俺の
冷たい仕打ちにも
関わらず
ここで働く。
”そばに居たいから”って・・・
俺だって
抑えている
思いがあるのに。
〇〇さんとは
話さないようにした。
〇〇さんが
ここで
頑張れば
頑張るほど
俺は苦しくなる。
知ってる?
”ここにいることは
無意味か”と
俺に問いかけていた時
起き上がって
抱き締めて
しまいそうになったことを・・・
まだ忘れられそうに
ないんだ。
どうして
そんなに頑張るの?
俺のため?・・
パソコンの画面の
前で体を揺らして
眠っている肩に
ジャケットを掛けた。
未練がましいな・・俺・・・
忘れるどころか
日に日に
〇〇さんを想うようになる。
そんな時
チャンミンがやって来た。
ストレートに
〇〇さんのことが
好きかと
聞かれた。
答えに困った俺に
チャンミンは
言ったんだ。
「僕は去るものは
追いかけません。」
「?・・・」
「もう終わったことです。
縁談は断りましたが
〇〇さんとは
何の関係もありません。
政略結婚はしない。
ただそれだけです。」
「”僕のため”・・とか
そう言うの止めてください。
そんな兄弟愛
気持ち悪いです。」
「チャンミン・・」
「あと
僕の方が
幸せに出来そうだからとか
そうゆうのも迷惑です。」
「・・・」
「どうせ
こんな小さな会社で
終わらせるつもり
ないんでしょ?」
今はまだまだだけど
将来的には
父さんの会社に
追いつくくらいに
しようと思っている。
チャンミンには
それも
お見通しだった。
「あぁ・・」
「だったら・・・
これ以上
言う必要もないですね。
僕は帰ります。」
チャンミンは
帰って行った。
わざわざ
それを言うために
来たのか?
俺に
〇〇さんを
諦めるなと言うために?・・・
俺は悩んだ。
そう言われて
このまま・・・
良いのだろうか・・・
「おぉ・・チャンミン・・」
帰ったばかりの
チャンミンから
電話があった。
『忘れてました。
独立祝い・・・』
「なんだ、そんなこと・・」
『そういえば
現場で
〇〇さんが大変なことに
なってましたよ。
僕は急ぐので
助けられませんが
見に行ってあげてください。
今頃・・では・・』
「え!?おいっ!!」
呼びかけても
プーップーッと
音が聞こえるだけ。
話しの途中で切るなよ。
大変なことって
何だよ!?
俺は夢中で
走っていた。
〇〇さんに
何かあったら・・・
幸い見つけた彼女は
何事もない様子だった。
それだけでもう・・・
「良かった・・
何もなくて・・・」
俺は〇〇さんを
抱き締めた。
俺の弟って凄い奴・・
これが
独立祝いか?
「ユノさん・・
私まだ大変です。」
〇〇さんが
俺の腕の中で言った。
「明日から
無職だから・・・
どうしましょう・・・」
もう我慢はしない――
彼女を強く抱きしめ直した。
「ウチで
働けばいいよ。」
俺もそばに居たい――
明日から
同じ場所で
働けるというのに
帰したくない気分だった。
送って行くと言って
車に乗せた。
しんみりした
雰囲気になって
見つめ合ったら・・・
その唇が
欲しくてたまらなくなった。
これまで
我慢出来ていたのに
一度崩れると
もう止まらなかった。
溢れ出す
気持ちのままに
唇を合わせた。
こんなにも
好きだったんだ・・・
もう放さない――








