我が身さへこそゆるがるれ - 山田太一作品集から 「沿線地図」(第1話~第8話)

自分の子供が高校を中退し、同棲を始める。そんな出来事に直面した2組の夫婦が、相次ぐ事件を乗り越え“生きる”ということを問いかける。「岸辺のアルバム」に続き、山田太一が書き下ろす衝撃のホームドラマ。パリに居住していた岸惠子が、4カ月間のスケジュールをとって来日し、山田太一の作品に出演したのも話題となった。
左下は小説形式の『沿線地図』、右下は「山田太一作品集 6」に収録されたシナリオ(台本)。

TBSドラマ『沿線地図』オープニング・タイトル
(あらすじ)
エリート銀行家松本夫婦(児玉清・河内桃子)のひとり息子・志郎(広岡瞬)と藤森電器店の夫婦(河原崎長一郎・岸惠子)のひとり娘・道子(真行寺君枝)は、ともに高校3年生だが、通学の電車の中で知り合ったことで2人は恋に落ち、やがて家を出てしまう。一方、2人の子供たちが何の不満も持たずに平和な暮らしを送ってきたとばかり信じていたお互いの両親は、慌てて我が子を探し始める。ある日、やっと道子の行き着けのスナックを経営している鉄太郎(新井康弘)から居場所を聞き出して、二人のアパートを訪れてみると、子どもたちの確信に満ちた生き方に、かえって自分たちがいかに形骸だけの空虚な生を送っていたかを思い知らされる。やがて子供たちの同棲をきっかけに、両家は家族のバランスを崩していき、不倫、自殺など相次ぐ事件に巻き込まれていく。
テーマソング
フランソワーズ・アルディ 「もう森へなんか行かない」
第1話

大学受験を控え、勉強ばかりで型にはまった毎日を送っていた高校生・松本志郎(広岡瞬)は、自分とは正反対の藤森道子(真行寺君枝)に次第に惹かれ、付き合うようになる。
第2話

大学受験を前に、道子(真行寺君枝)と付き合ってから試験の成績が下がり、ショックを受けた志郎(広岡瞬)は、もう道子とは会わないと決心をするのだが…。
第3話

志郎(広岡瞬)と道子(真行寺君枝)はついに家出をする。それを知った藤森家・松本家の両親は大慌てで我が子を探し始めるのだが…。
第4話

藤森道子(真行寺君枝)と松本志郎(広岡瞬)の両親は毎晩のように鉄太郎(新井康弘)の店を訪れ、何とかふたりの居場所を聞き出そうとするのだった。
第5話

志郎(広岡瞬)は父・誠治(児玉清)に自分の本心を話そうと久々に対面し、真剣に話し合うがうまくいかない。一方道子(真行寺君枝)は両親なんて気にならないと言うが…。
第6話

家出した志郎(広岡瞬)と道子(真行寺君枝)は、鉄太郎の情報からとうとう両親に見つかってしまう。二人は自分達のアパートで両親を交えた話し合いをすることになった。
第7話

志郎(広岡瞬)と道子(真行寺君枝)がこのままの状態だと退学になると知った両家は、なんとか二人に戻ってきて欲しいと、アパートへ行き必死に説得をするのだが…。
第8話

志郎(広岡瞬)と道子(真行寺君枝)は、些細なことから喧嘩が増えていた。そしてその頃、志郎は職場の人間関係に悩んでおり、なんとか偏見を解こうと努力するのだが…。
我が身さへこそゆるがるれ - 山田太一作品集から 「岸辺のアルバム」(第8話~第15話)
昭和ホームドラマの金字塔、1977年夏にTBS系列で放送され、「辛口ホームドラマ」として放送史に燦然と輝く名作。その原作小説は1976~77年にかけて東京新聞ほかで連載された。
第八話則子(八千草薫)は繁(国広富之)に、北川(竹脇無我)とはもう会わないと告げる。そんな中、律子(中田喜子)のアルバイト先を訪れた繁は、律子の恋人を紹介される。
第九話律子(中田喜子)は恋人のチャーリーに捨てられ、さらにチャーリーの友人から乱暴されてしまっていた。一方、則子は町で妻子を連れた北川(竹脇無我)を見かけ…。
第十話律子(中田喜子)はチャーリーの友人から乱暴され、妊娠していた。誰にも相談できずに悩んだ律子は、繁(国広富之)の高校時代の担任・堀(津川雅彦)に相談する。
第十一話謙作(杉浦直樹)が仕事で売春に関わっていることを耳にした繁(国広富之)。その後、久しぶりに雅江(風吹ジュン)と会った繁は、田島家に関する驚きの事実を聞かされる。
第十二話繁(国広富之)は勉強どころか、何も手につかなくなって荒れてしまう。久しぶりに一家4人が揃ったある日曜日、田島家は川岸に並んで家族写真を撮影するのだった。
第十三話家を飛び出した繁(国広富之)は、雅江(風吹ジュン)の紹介でラーメン屋の住みこみで働くことになった。律子(中田喜子)は、謙作(杉浦直樹)と則子(八千草薫)が離婚をするのではないかと案じたが、謙作はしばらくの間、はっきりとした態度を示さなかった。謙作は絢子(沢田雅美)と浮気しようとするが、あっさり断られる。そしてある夜、謙作と則子は話し合いの機会を作る。則子は家に残ることを希望し、謙作も心から則子を必要としていた。浮気の事は忘れるよう努力してやり直そうと誓う謙作だったが、則子との溝は埋まらなかった。そんなある日、謙作は帰宅途中で倒れ、救急車で運ばれてしまう。
(全十五話中、第十三話のみフリー動画はありません。NHKオンデマンドもしくは日本映画専門チャンネルでご視聴ください(館長)。
第十四話家を飛び出した繁(国広富之)は、雅江(風吹ジュン)の紹介の店に住み込みで働くことになった。一方、謙作(杉浦直樹)と則子(八千草薫)は話し合いの機会を作る。
第十五話多摩川が増水し、付近一帯に避難命令が出された。久しぶりに一家4人が揃う。則子(八千草薫)たちは一時避難の際、田島家の記録であるアルバムを持ち出そうとする。
(呟き)当ブログの主である洋画探偵も台風の過ぎ去った直後の多摩川を目撃した。映画関係の仕事で岡山から大阪を経ての帰路、電車は多摩川の鉄橋を徐行運転しながら渡ったのだった。平時は野球場などもある広大な河川敷も堤防上部まで増水した濁流で覆われていた。こんな多摩川はかつて見たことが無かった。本作品の「目玉」が則子を演じた八千草薫にあることは誰にでも分かるが、シナリオは<性>を巡る則子の心の襞まで描き切り、八千草薫ファンにとって山田太一はサディストではないかとさえ疑わせる。なおシナリオでは竹脇無我演じる北川が健作より長身となっているが、動画を見ると竹脇無我がシークレット・ブーツを履いていることが分かる。杉浦直樹の筋肉質の身体が悲しい。
我が身さへこそゆるがるれ - 山田太一作品集から 「岸辺のアルバム」(第1話~第7話)
Amazon レビュアーさんの一人が探偵の思いをほぼ言い当てておられるので、先ずそれを紹介する:
☆ Edgarさん、5つ星のうち5.0 日本のドラマが大人だったころ
いきなり個人的なことを書くけれど、僕は小説『岸辺のアルバム』を21世紀になって読んだ。そのとき僕はヨーロッパを一人旅していたのだが、ミュンヘンとかヴェネチアとかそんなのがどうでもよくなるくらい、旅先でこの小説に熱中した。これ以降、僕は山田太一を本気で読むようになった。
『岸辺のアルバム』はドラマとしても有名な作品だ。このタイトルを聞くだけで、ジャニス・イアンの名曲「ウィル・ユー・ダンス」がすぐに浮かんでくる。しかしきっと映像を見るチャンスはないだろうから、小説は小説として、活字で残っている山田太一自身のシナリオを読んでみようと思った。
映像を見るチャンスはあった。YouTubeにほとんどがアップされていたのだ。よって映像と活字を交互に鑑賞した。そして今思うのは、70年代は日本のテレビドラマが最も「大人」の時代だったのではないかということだ(山田太一が不在の今のテレビドラマ界に、僕は何の興味も持てずにいる)。
小説とドラマは似ている部分も多いが、かなり違う。ドラマと脚本を鑑賞した後、小説も少し読み返してみると、「同じなのに全然違う」という不思議な印象を受けた。大きな改変としては、父親の仕事上のある秘密が小説とドラマでは異なっているのだが、これは局側からの要望だったらしい。
上記のように本TVドラマは最初、東京新聞等の媒体による「新聞小説」として発表された。しかし当然ながらドラマ化にあたっての脚本は山田太一自身が行っている。脚本を書くにあたって作家が採る方法の1つに「ハコ書き」というのがある。
☆ 飯友優さんのHP 「ストーリー作りとアイデアの出し方」
ハコ書きとは?

Wikipedia: 山田太一(脚本家)
第一話田島則子(八千草薫)は夫と2人の子供を持つごく普通の主婦。幸せだが平凡な毎日に少し退屈していた彼女に、ある日見知らぬ男から電話がかかってくるようになり…。
第二話則子(八千草薫)は男との会話を楽しむようになっていた。一方、則子の息子・繁(国広富之)はハンバーガーショップの店員・雅江(風吹ジュン)から交際を申し込まれる。
第三話則子(八千草薫)は電話の男・北川(竹脇無我)と会ってしまう。則子は心のときめきを押さえきれずにいた。一方、息子・繁(国広富之)は則子が浮気しているのではと疑う。
第四話則子(八千草薫)はデートを重ねるうちに北川(竹脇無我)の存在が大きくなっていることを感じていた。そんなある日のデートで、北川は則子に「浮気の提案」をする。
第五話北川(竹脇無我)から浮気の提案をされた則子(八千草薫)は、もう会わない方がいいと思っていた。そんな中、則子は健作(杉浦直樹)の同僚の妻・時枝(原知佐子)と会う。
第六話則子(八千草薫)は北川(竹脇無我)と関係を持つ。一方、謙作(杉浦直樹)は絢子(沢田雅美)から、繁(国広富之)は雅江(風吹ジュン)からそれぞれ言い寄られていた。
第七話母・則子(八千草薫)がホテルに入るところを目撃してしまった繁(国広富之)。愕然とした繁は則子を待ち伏せし、相手がどんな男なのか確かめようとするが…。