コンドル(24)
ターナーのアクション・プラン(行動計画)は決まった。郵便配達夫の殺し屋がポケットに残したメモと鍵(賢い読者は,これが襲撃に失敗した時にターナーをおびき出すためのジョベアの罠でもあることに気づいたであろう。もちろん,ターナーも罠と知っていて計画を立てた。勝算があるのだ:探偵)を頼りにジョベアの居所をつかむこと,そしてジョベアの筋から本当の依頼人,首謀者を突き止めることである。ターナーはベル研究所の出身だ。電話に関する科学技術には長けている。車の中でキャシーに「CIAの内部にもう1つのCIAがある」と説明して,計画を実行に移し始める。冬の日は落ちるのがはやく,もう夕方になっていた。
街を歩けば必ずどこかで水道工事や電話工事をしているものだ(ニューヨークとはそんな街である)。ターナーは何食わぬ顔で現場の電源を切ると,工事が止まってあわてている現場の車からツール・ボックスを盗み出した。そして鍵のコピー屋に向かい,あの鍵がホリディ・イン・ホテルの819号室のものだと言うことを聞き出した(もちろん,小銭を渡して)。そしてホテルの自動電話交換室に潜入する。
ツールを利用して電話を819号室に繋ぐ。
ジョベアの部屋で電話が鳴る。自動電話交換室からはターナーの声で:
「おれは情報屋だがね。コンドルの立場は危険かね」
もちろんジョベアは応答しない。しかし,確認の電話をどこか(もちろん,アトウッドだ)にする。
待ち構えていたターナーはそのダイヤル・アップ信号をポータブルのレコーダに記録する。
ジョベア:「妙な電話が入った。コンドルの情報についての電話だ」
電話の相手:「そんなことで電話をするな」
ジョベア:「確認をするためだ。そっちには入ったか」
電話の相手は「いや」といって電話を切った。このやりとりをターナーも当然傍受している。
(ここは,もう素直に受け取れない。つまり,ジョベアはターナーの動きを察知して自分の次に打つべき手を決めたのだ。それは,ターナーに先回りしてアトウッドを殺すことである。)
ターナーは録音した信号をこんどはCIAラングレーの中央コンピュータに送る。彼はまだCIA要員なのだから,解析は受け付けられる。
コンピュータ室から応答があった:「その番号は202-227-0098だ。」(画面ではなぜか最後の2桁がXXとなっている:探偵注)ターナーはそれをメモる。次はCNA世界通信社に顧客係を装って電話をかける。CNAケーブル・ニュースはCIAの幹部なら必ず契約しているからだ。
案内係が応える:「そのお客様はレナード・アトウッドさんです。住所はマッケンジー・プレイス365」
ついに突き止められた。顔はまだ知らないが,作戦副本部長だったのである。ヒギンズの上司にあたる。
一方ヒギンズは夜のCIA本部に到着して対策を開始する。もうキャシーの家での出来事は把握されていた。まず資料から殺し屋をよく洗い出す。端末に出てきた郵便配達夫の名前はウイリアム・ロイド,元砲兵軍曹,経歴は「CIA海外勤務,レバノン,リビアなど」
そしてジョベアの身元を洗う。出てきた経歴は「爆破担当」であった。彼が実行した襲撃の際に炎上する車が資料として画面に出る。説明文は「フリーのG・ジョベア。推薦者はウイクスとロイド」。想像以上に恐ろしい男だった。
ヒギンズ:「知らなかった…」
夜の街。ニューヨーク電話会社の地下機械室に潜入するターナーがいる。外ではキャシーが車の中で待つ。彼が電話をかける先は?
ワシントンのCIA本部対策室だ。アトウッドも当然出席している。そしてそこにターナーからの電話が入った。
少佐:「はい,少佐」
ターナー:「コンドルだ。ヒギンズを」
少佐は電話を逆探知装置にセットしてから,ヒギンズに告げる:「コンドルです」
ヒギンズ:「ハロー,コンドル」
ターナー:「ホリデイ・インだ。819号室に問題の男がいる」
ヒギンズ:「君はどこにいる。」
ターナー:「静かに聞け。アトウッドは何者だ?」
ヒギンズは目線をちらとアトウッドに投げるが,気づかれた様子は無い。
ターナー:「どうした。友達だろう?」
本部長が怪訝な顔をする。「なんだね?」
そこへ少佐から逆探知の連絡が来た,「成功だ」。ヒギンズの「出せ」という指示に少佐が電話先を突き止めようとすると,考えられないことになんと50本以上の電話に繋がってしまっている。これでは相手の居場所を突き止められない…
手はすべて打った。ターナーに残されているのはキャシーをどうするかである。
夜のERIE- LACKAWANNA- HOBOKEN- TERMINAL(ワシントン行きの鉄道駅)。
待合室前でキャシーが煙草を喫っているところへ,切符を買い終えたターナーが来る。
ターナー:「煙草を喫うのか?」
キャシー:「止めていたの。3日前まではね。顔色が悪いわ」
ターナー:「照明のせいさ」
キャシー:「向こうでは」
ターナー:「男に会う。」
キャシー:「また秘密?」
ターナー:「君の写真と同じさ。」
キャシー:「そのうちあなたに見せたいわ。無事に戻れればね。」
ターナー:「ワシントンに来ないか?」
キャシーは煙草を吹かす。内心は行きたい。しかしこう答えた。
「無理よ。」そして付け加える「あなたにはすてきな点がたくさんあるわ。でも…」
ターナー:「どんな点?」
キャシーは黙ってターナーに体を寄せた。
「目がすてき。優しくはないけど,ウソはつかないし,逃げない目よ」
そしてよく自分に言い聞かせる:「惹かれるわ」
ターナー:「でもバーモントへ?」
キャシーはちょっと意外な顔をする。
ターナー:「そいつはタフ・ガイか?」
キャシー:「かなりね」
出発の案内放送が流れる。「ワシントン方面のお客様はお急ぎください」
別れの時が来た。男も女も明日を信じて生きていく他はないのだ。それはよく分かっている…
ターナー:「キャシー,僕には時間が必要だ。8時間位でカタが着く。バーモントへは直ぐに?」
キャシー:「ええ」
ターナー:「だれにも電話しないほうがいい。途中で止るな。二人のことは誰にも…」
キャシーは泣いている:「しないわ」
ターナー:「済まない。違うんだ」
二人は名残おしそうに抱き合った。「まもなく発車します」という案内の声が聞こえている。ターナーは後ろを何度も振り返りながら搭乗口に消えていった。