コンドル(21)
ターナーからの次の一手は決まった。ターナーはいざというときは大胆だが,きわめて慎重かつ論理的な男である。一方,マックス・フォン・シドーの側からも罠が仕掛けられていることに,注意深い観客ならばもう気づいていると思う。ターナーはそれが罠だということを十分承知のうえで行動しているのだ。それには絶対に気心の知れた助けが要る。CIA本部の方でも対策に動き出しているだろう。駆け引きであるとともに,時間との勝負でもある。そして向かった先は,やはり―――
ここからのツインタワー・ビル内部の映像(ロケよる実写)は今となっては実に貴重だ。DVDをお持ちの方はしっかり目に刻み付けておかれることをお勧めする。これはもうこの世に存在しないのだから。
車はビル前の駐車スペースに着いた。何か台詞を暗唱していたキャシーにターナーが言う。
「大丈夫か?心配しないで。落ち着いて」
そして決意して車を降りるキャシーに再度声をかけた。
「キャシー,ありがとう。」
キャシーいやさフェイ・ダナウエイがどれほど頼もしい味方であるのかはこれから実証される。乗り込む先がCIAニューヨーク支部なのだから。
CIAのマークが堂々と出ているニューヨーク支部の受付でキャシーは事務職員への応募者になりすまし,内部に侵入した。訪ねることになっている「アディソンさん」のドアの前を通り過ぎ,そして目当てのヒギンズの部屋のドアを探す。ドアを開けると奥の部屋のデスクにヒギンズが座っているのが見える。
キャシー:「アディソンさん?」
デスクから顔を上げたヒギンズ:「いや,行き過ぎてますよ」
キャシー:「あ,すみません,どうも」
これでヒギンズの顔は確認できた。
ターナーは1階の吹き抜けにあるデッキ・ロビーで待機し,キャシーはヒギンズが昼食に出かけるためエレベータから降りてくるのを1階エレベータ・ホールで待つ。
しばらくして,暖かそうな毛皮の襟のついた高級そうなコートを着て,帽子を被り,髭を蓄えたヒギンズ(クリフ・ロバートソン,オスカー俳優で鈍い,じゃなかった渋い男)がエレベータから降りてきて出口に向かうと,キャシーはすぐにその少し後をついて歩き,ターナーが車で先回りする。外のレストランに行くようだ(キャシーの出番が残り少なくなったので,ここは細かくする。続く)