雨の中
ふと歩いてきた道を振り返ると
綺麗に舗装されたコンクリートには
落ち葉一枚も枯れ枝一本もなく
ただ無機質で
ぬくもりのない
冷たい灰色の路上で
私は何のために
掃き続けていたのかわからず
ザーザーと降りしきる雨の中
想いの谷に落ちそうになる
あの落ち葉を降らせていた大木は
いつの間にかなぎ倒され
ただ灰色の空が広がっていた
もしかしたら
あのまま振り向かずに
ただひたすらに
目の前に積み上がる枯れ葉の山を
片付ける使命のまま進めば
よかったのかもしれない
要領の悪い掃除夫は
自分以外の誰かが
なにもなかったかのように
片付けてしまうなんて
考えもしなかったから
気付く前に
気がつけばよかった
自分だけの力で
どうにかなると思ったのか
私はふと足元に
フィルターだけになった
タバコの吸い殻を見つけ
急いでちりとりの中に収めた
きっとまだ自分が出来る
小さなきっかけはあるんだと
私は自分に
言い聞かせる