兵庫県の国宝・重要文化財建造物 (3)西脇・加西・加東編 | 国宝・重要文化財指定の建造物

国宝・重要文化財指定の建造物

全国の国宝・重要文化財に指定された建造物についてのブログです。

このブログについて:

兵庫県北播磨北部地域で国宝や国の重要文化財に指定された建造物のうち、私がこれまで訪問したものを紹介しています。
個人の備忘録みたいなものですが、実際に訪ねてみたら目当ての文化財が塀や樹木の陰で見えないといったことも時々あるので、ここでは、このあたりも詳しく書いて、閲覧してくれた方の参考になるように考えました。また、文化財の位置は国指定文化財等データベースで確認できますが、間違った情報も結構多いので、ここでは現地で実際に確認した座標を記載しています。
記載内容は訪問日時点のものです。情報が古くなってしまっている可能性もあり、修復工事が始まって見学できないこともあるので、注意してください。

西脇市
旧西脇尋常高等小学校 第一校舎、第二校舎、第三校舎
加西市
一乗寺本堂  
一乗寺妙見堂  
一乗寺弁天堂  
一乗寺護法堂  
一乗寺三重塔  
一乗寺五輪塔  
酒見寺多宝塔  
住吉神社 東本殿、中本殿、西本殿、拝殿
加東市
若宮八幡宮本殿  
住吉神社本殿  
朝光寺本堂  
朝光寺鐘楼  

 

 

戦前の洋風木造校舎

旧西脇尋常高等小学校


きゅうにしわきこうとうじんじょうしょうがっこう
西脇市西脇
旧西脇尋常高等小学校 第一校舎 34.991233, 134.977150
昭和
木造、建築面積六四五・六八平方メートル、二階建、金属板葺
第二校舎 34.991473, 134.977282
昭和
木造、建築面積六二四・七〇平方メートル、二階建、金属板葺
第三校舎 34.991706, 134.977353
昭和
木造、建築面積六二八・〇一平方メートル、二階建、金属板葺

 

旧西脇尋常高等小学校は、西脇市街の北西の高台に所在し、その校舎は現役の小学校校舎として使用されています。校舎は地場産業である播州織の興隆もあって昭和9年から12年に建設されたものです。設計は、多くの公共建築を手がけた地元出身の建築家、内藤克雄です。
・手前から第一校舎、第二校舎、第三校舎の三棟の木造二階建て校舎が並ぶ
・スティック・スタイルを基調とした簡素ながら上品な外観
 
・写真左が第一校舎で、右が第二校舎、これらを附指定の中央渡廊下(写真手前)と西渡廊下(写真奥)が繋ぐ
 
・写真中央が第二校舎で、右奥が第三校舎、これらを附指定の東渡廊下が繋ぐ
・写真左手前は附指定の東便所
 

 


第一校舎
 
・全般的に質素な意匠だが、玄関まわりは装飾を凝らしている
・壁面は平板スレートの下見張りで、中央部分と一階窓下は波板スレートの縦張りとして変化を付けている
・二階窓上の小壁は漆喰塗り
 
・正面中央に半切妻造のゲーブル(妻壁)を掲げる
・壁面の付柱は、軒高にブラケットを飾る
 
・車寄せは一文字葺の腰折れ屋根で、腰折れ部に反りを付ける
・車寄せ壁面はモルタル掃付けのドイツ壁
 
・玄関ホールの奥が中央渡廊下で、その先に第二校舎が見える
 
・廊下を北側に通し、南側に教室を並べる
 
・普通教室は南面と北面廊下側に窓を設ける
 
・二階東端は旧裁縫室で、床を高く張って畳敷きとし、天井は折り上げの竿縁天井
 
・室戸台風前の建築であるため補剛材は用いられていない
 

 


第二校舎
 
・外観は第一校舎と同様の意匠とする
・第二校舎には校長室、職員室など、管理機能が集約されている・東渡廊下に破風が設けられており、その奥が職員室の入口
・第二校舎と第三校舎は室戸台風後の新基準で設計されている
 
・校長室の隣には応接室が設けられている
 
・室戸台風後の新基準に適合するよう、補剛材が用いられている
 

 


第三校舎
 
・第三校舎は第二校舎と同様の外観
 
・理科準備室であった部屋には建築当時の戸棚が残されている
 
・第三校舎内部
 

 


東渡廊下(附指定)
 
・柱は近年、耐震補強されている
 
アクセス
JR加古川線西脇市駅北2.7kmです。新西脇駅の方が1kmほど西脇小に近いですが、西脇市駅から先は列車本数が少なくなります。西脇市駅から、本数は少ないですがバス便も利用できます。大阪・神戸からは西脇行きの高速バスで東本町下車、北700mです。
見学ガイド
西脇小学校校舎は現役の校舎であるため、通常は非公開です。不定期で特別公開が行われ、そのときは校舎内部に入ることもできます。公開時以外は敷地西側の公道から校舎の一部を見ることができます。丁度よい場所に歩道橋がありますが、植栽に邪魔されて視界が開けません。東側は校地が盛土になっているので公道から校舎を見ることはできません。

 

感想メモ
予約制の特別公開に参加しました。思ったより多くの人が来ていて、いくつもの班に分かれて見学しました。団体行動ですが、ゆっくりと説明してもらえたので、ストレスなく見学することができました。あいにくの雨天でしたが、小降りの間に外観も見学することができてよかったです。
(2022年2月訪問)
前回の訪問時は天気が良くなかったので再訪しました。今回は天気が良くて、校舎がきれいに輝いていました。地元の方の見学が一巡したのか、今回は見学者が少なく、現地に着いたときは公開日を間違えたのか心配になるほどでした。
(2025年1月訪問)

 

参考
国指定文化財等DB、現地解説、西脇小学校保存活用計画

 

 

西国三十三所の第二十六番札所

一乗寺


いちじょうじ
加西市坂本町
一乗寺本堂 34.859279, 134.818983
江戸前期
懸造、桁行九間、梁間八間、一重、入母屋造、本瓦葺、背面閼伽棚附属
一乗寺三重塔 34.858950, 134.818954
国宝・平安後期
三間三重塔婆、本瓦葺
一乗寺妙見堂 34.859529, 134.818567
室町後期
三間社流造、檜皮葺
一乗寺弁天堂 34.859509, 134.818507
室町中期
一間社隅木入春日造、檜皮葺
一乗寺護法堂 34.859586, 134.818802
鎌倉後期
一間社隅木入春日造、檜皮葺
一乗寺五輪塔 34.858547, 134.819383
鎌倉後期
石造五輪塔
元亨元十月十七日の刻銘がある

 

法華山一乗寺は加西市南部の山間地に位置します。白雉元年(650)創建と伝わる天台宗叡山派の古刹で、西国三十三所の第二十六番札所です。中世には書写山円教寺などとともに播磨6ヶ寺のひとつに数えられ、武家・国衙がともに祈願所としていました。

 


本堂
 
・元和3年(1617)の旧本堂の焼失後、寛永5年(1628)に再建されたもの
・懸造の九間堂で、規模が大きく、全体的には中世以来の伝統的手法を踏襲
 
・背面には閼伽棚が設けられている(写真左)
 
外陣: 
・梁行三間を外陣とする
・柱を減少させて礼拝空間を拡大させるなど近世的手法もみられる
・外陣天井には江戸時代の巡礼札が数多く残る
 

 


三重塔
 
・相輪伏鉢の刻銘から平安時代の承安元年(1171)の建立であることが知られる
・方三間で、上層ほど屋根の大きさや軒の出が小さくなるなど、古塔の姿をよくとどめる
 
相輪上部: 
・相輪の意匠も上代の伝統を示している
 
・棟の中間部分がわずかに盛り上がった「むくり」を持つ珍しい様式
 
・蟇股や組物など細部の形式にも時代の特徴がよくあらわれている一方で、垂木が六支掛となっていることなど、中世の特徴も見られる
 

 



 
・右の三間社が妙見堂で、左の春日造が弁天堂
 

 


妙見堂
 
・三間社流造浜床付で、高欄は設けない
・細部に桃山様式もみられるが、建立は室町時代後期まで遡るものと推定されている
 
・組物等に後補が多い中、身舎正面中央の蟇股は古様を残している
 

 


弁天堂
 
・妙見堂に並立する一間社隅木入春日造の社殿
・建物全体は護法堂と似ているが、浜床・高欄がないことや、軒支輪・木鼻などに違いが見出される
・建立年代は室町時代中期に属するものと考えられている
 
・軒裏の斜め方向の部材が隅木
 

 


護法堂
 
・仏法と行者を守護する毘沙門天をまつる小規模な一間社で、本堂後方の丘の上に建てられている
 
・組物は出組、軒支輪付で、蟇股・木鼻など細部様式からみて、建立年代は鎌倉時代後期まで遡るものと,考えられている
 

 


五輪塔
 
・もとは近隣の墓地にあったもので、各輪の四方に四方五大の種子が彫られている
 
・地輪東面には「元亨元 十月十七」の刻銘がある(梵字の左)
 
アクセス
北条鉄道法華口駅とJR山陽本線姫路駅を結ぶバスで法華山一乗寺下車、すぐです。境内に入り直進して石段を上ると、三重塔、本堂に出ます。本堂背後右手に護法堂、左手に妙見堂と弁天堂があります。境内にはいくつかの五輪塔がありますが、重文指定の五輪塔は、石段の手前を右折して左手の林の中に一基独立して建てられているものです。
見学ガイド
一乗寺は有料で公開されています。拝観時間は8:00〜17:00です。本堂は外陣内部にも立ち入ることができます。

 

感想メモ
高低差のある広い境内に、多数の見ごたえのある文化財が残されています。どの文化財も間近に見ることができましたが、植栽の多い傾斜地に建てられいるため、建物の全体をとらえることができる視角は限られていました。特に、三重塔は、南側が植栽に視野が遮られ、西は立入り禁止なので、午後は逆光になります。三重塔北側の一段高い場所にある本堂からは塔を綺麗に見ることができますが、晴れた日は逆光です。
(2021年12月訪問)

 

参考
加西市公式サイト、兵庫県立歴史博物館公式サイト、重要文化財一乗寺本堂の平面変遷について

 

 

桧皮葺・本瓦葺を併用した極彩色の多宝塔

酒見寺多宝塔


さがみでらたほうとう
加西市北条町北条
酒見寺多宝塔 34.934943, 134.829464
江戸中期
三間多宝塔、一重本瓦葺、二重檜皮葺

 

酒見寺は北条の旧宿場町に位置します。行基菩薩の開創と伝える真言宗の寺院で、天正年間兵火にあって焼亡し、そのあと再興されたのが現在の伽藍であるとされています。 多宝塔は相輪伏鉢の刻銘などから寛文二年(1662)の再建であると考えられています。
・台輪、組物、丸桁など、各所に極彩色を施 している
・上重が桧皮葺、下重が本瓦葺として葺き方を異にしているのは、類例が少ない
・上重の軸部の径が下重の総柱間に対して細いこと、上部の亀腹が小造りであることなど前代風をよくのこしており、大型で安定した外観を有している
 
・上重は禅宗様の二軒扇垂木で、組物は和様の実肘木付き四手先
 
・下重軸部は円柱を長押で固める
・二軒の平行繁垂木で柱上は出三斗
・中央間は桟唐戸で、両側間は連子窓
 
アクセス
北条鉄道北条町駅下車、北西800mです。
見学ガイド
多宝塔は常時自由に見学することができます。塔の西側の参道から見ることになるので、午後の方が光の具合がよくなります。

 

感想メモ
北条宿の旧街道は、演出がほとんどない普段着の道路ですが、それが逆に魅力であるように思います。
安定感のある多宝塔に、奇抜な彩色。面白いです。
(2021年12月訪問)
隣接する住吉神社が新たに重文指定されたので再訪しました。今回は順光になる午後の遅い時間を狙って訪問しました。極彩色の多宝塔が綺麗に輝いていました。嫌味のない純粋に綺麗な輝きでした。このあたりは良く計算されているのかと思います。
(2024年2月訪問)

 

参考
現地解説版

 

 

三殿並立の大型社殿

住吉神社


すみよしじんじゃ
加西市北条町北条
住吉神社 東本殿 34.935461, 134.828660
江戸末期
桁行四間、梁間正面一間背面二間、切妻造、銅板葺
中本殿 34.935465, 134.828559
江戸末期
桁行四間、梁間正面一間背面二間、切妻造、銅板葺
西本殿 34.935477, 134.828460
江戸末期
桁行四間、梁間正面一間背面二間、切妻造、銅板葺
拝殿 34.935290, 134.828534
江戸後期
中央部 桁行三間、梁間四間、切妻造、本瓦葺、正面向拝一間向唐破風造、銅板葺
両側部 各桁行四間、梁間三間、両端部入母屋造、本瓦葺

 

住吉神社は旧北条宿の酒見寺の西隣に鎮座する式内社です。住吉神社の名称は明治になって定められたもので、それ以前は酒見大明神、酒見社などと呼ばれ、酒見寺と一体となって管理されていました。本殿は東本殿、中本殿、西本殿の3棟からなり、嘉永2(1849)から5年にかけて建立されました。本殿の前の長大な拝殿は文化5年(1808)の建立です。
・東本殿、中本殿及び西本殿は同型同規模で並立する(写真は本殿背面で、手前から西本殿、中本殿、東本殿)
・いずれも切妻造妻入の大型本殿
 

 


東本殿
 
・正面に装飾豊かな彫刻をつける等、幕末らしい意匠をみせる
 

 


西本殿
 

 


拝殿
 
・中央部の奥行を大きく造り、屋根を切り上げる独特な形式
 
・唐破風内にも勇壮な図案の彫刻が施されている
 
・内部も木鼻や肘木など、凝った意匠としている
 
アクセス
北条鉄道北条町駅下車、北西800mです。
見学ガイド
住吉神社は常時自由に参拝することができます。本殿は瑞垣越しに見ることができます。三殿のうち中本殿は背面以外ほとんど見ることができません。東西両殿の正面は脇門の格子の隙間から見ることができます。

 

感想メモ
隣の酒見寺には以前訪問しましたが、その時は住吉神社は未だ重文指定されておらず、素通りしていたので再訪しました。切妻の大型社殿が住吉づくりを彷彿させるとの解説がありましたが、住吉造の凛とした佇まいは装飾過多な江戸後期の建築とは対極にあるので、ちょっとそういう印象を持つのは難しかったです。
(2024年2月訪問)

 

参考
国指定文化財等DB