アルテミス合意に見る宇宙リスク | KCR総研代表 金田一洋次郎の証券アナリスト日記

アルテミス合意に見る宇宙リスク

 2020年代は宇宙時代の本格的幕開けの予感をさせるに十分である。しかし、この宇宙の膨大な資源を巡って大きな分断が生まれつつある。

 特に気になるのは、アルテミス合意だ。アルテミス合意は、アメリカが2024年の打ち上げを目指し進める有人月面探査のアルテミス計画を念頭におき提唱されたものであり、現在、15か国が加盟しているとされる。

 その1国にウクライナが加盟しているのだ。アルテミス合意は、宇宙の平和目的が主たる目的だが、その合意内容には透明性の確保や相互運用性の確保などが上げられる。しかし、その項目のなかで気になるのが、科学データの共用である。

 アルテミス合意における有人月面探査計画は、もう目前まで迫っており、この合意において、どこまで加盟各国が機密情報を共有しているのか分からないが、ウクライナが持つ情報がロシアの手に渡ればどうなるのか!?

 宇宙の無限のフロンティアを巡り、ロシアと中国は結託しており、近年の中国における宇宙技術の発展の陰にロシアが協力していることは間違いないと思われる。

 ロシアと中国は、積年の敵対国であったが、共通の敵を互いに認め、急速に協力関係を築いてきている。軍事技術開発をはじめ、宇宙技術開発も、西側の思惑をよそに分断されていくというシナリオが現実味を帯び始めている。

 JAXAのホームページなどを覗くと「宇宙空間、そこに国境なんてありません。」などと脳天気なコピーが躍るが、国際宇宙ステーション(ISS)にロシアが深く関与していることはご承知の通り。そのロシアを通じ、中国に宇宙技術がわたり、かつウクライナ有事によって有人月面探査技術や科学的データが漏洩すれば、中ロが画策する宇宙開発において、西側は決定的なハンデを背負っているといっても過言ではない。

 ひょっとすると平和ボケしてきているのは日本だけではなく米国もそうなのかもしれない。長年の自国とは直接関係のない紛争介入から国民には厭戦ムードが漂い、それがアフガニスタン撤退への失策に繋がった。こちらがどう思うと、そう思わない敵対国がいる以上、情報や技術開発といったものの取扱いに早急な調整が必要である。

金田一