【真夜中の帰り道】

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YAKOとオレは性懲りも無く、真冬の真夜中に歩き回る。
手袋を忘れてポケットに手を入れて歩くオレのポケットに手を入れて
指を絡めて来るYAKO。
「??」って見返すと、ニコッと笑い返す。
そして握った手を更に強く握りしめてくる。

真冬の歩道は滑るから、どちらかが転んだら一緒に倒れこむんだよ。
でも正しく楽しい中年カップルは、真夜中3時過ぎの電車通り沿いの道を歩くのだ。
見慣れた景色も二人だと楽しい。
冷たい風が吹いても二人だと暖かい。

YAKOのマンションの前でいつもの様にハグする。
今夜はもう少しだけ近づきたかったから、頬をくっつけてみた。
YAKOも嫌がらずに受け入れてくれたよ。
頬を摺り寄せて「オヤスミ」と云う。

Kissまで、あと5cm。
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【帰れない二人】

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y子の夜のアルバイトのシフトは、火曜・木曜・金曜の週3日間。

週末はそこそこ賑わう店も週初めの火曜は流石に閑古鳥が鳴く事が多い。

そんな時はy子からオレ宛にメールが届く。

「暇だよ~」「ママとお掃除ばっかりしてるよ」

と店の暇な状況が手に取る様にわかる。

その内に「おいでよ~」なんてメールが来る事もあるが、バカなオレは「えーー!!」とか云いながら

嬉々として出仕度をするのである。

吹雪の中をy子に逢いたい一心で地下鉄駅まで歩くバカおやじである。


暇な店は大抵オレの他におらず、ママさんとパパさんとy子とオレとで、まるで親戚や家族の様に

酒を酌み交わすのである。

いや最近は皆が仲良過ぎて、本当に家族なのか?と思うほどである。


25時にバイトが終るy子と一緒に店を出る。

すぐに帰らないのが悪い癖で、必ず1軒顔を出して飲んでしまうのだ。

「B」もしくは「K」と云うBarで、共にマスターはおれ達と同じ46歳の男。

「B」では素敵なSoulを聴きながらワインを傾け、「K」ではカラオケ歌いながらワインを傾ける。

常におれ達はワイン、それも赤ワインばかりを飲んでいるのだ。


昨夜もお決まりのコースで「K」に行ったのだが、疲れたy子がカウンターで眠ってしまった。

マスターとおれは、y子を起こさない様に静かに話を続けていた。

おれのy子への気持ちも、もうバレているだろうな。


今日の昼、y子と少しメールのやり取りをした。

最後のメールにこうあった。

「Sクンと一緒にいる時が、今は一番落ち着きます」


離婚も一向に決着がつかず、金銭的にもゆとりがなく、フラの仕事も過渡期になり様々なストレスが

彼女を襲っているらしい。

引っ張りまわして申し訳ないが、おれもy子といる時が一番自分らしいと思えるんだ。

逢いたい時に逢えないが、大人だから我慢するしかないのだ。

だから恋しさが募って行くのだ。

何やってんだか、なあ。。。




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その後のy子とオレ

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1月の後半からススキノのスナックでバイトを始めたy子。
彼女が勤めた店は60歳代のパパさんとママさんが経営する、アットホームな店。
住所とビルの名前を聞いて驚いた。
オレが生まれ育った場所の裏に35年前に出来たビルで、その昔は知り合いの
叔父さんがキャバレーを経営していた跡地に建ったビルなのだ。
本当に彼女との不思議な縁を感じずにはいられない。

彼女が水商売でバイトを始めたのは、今のダンナから金銭的にも自立したいのと
若い頃に水商売をしていた経験、まあ昔取った杵柄があるからだ。
誰とでもフランクに話が出来て、嫌味の無い雰囲気、歌もかなり上手いから、
店のママも一発で気に入ったに違いない。

週に3日、フラのレッスンに影響が出ない日を選んでの出勤。
オレは初めての金曜日にy子に誘われて、その店の扉を開いた。
美人で優しそうなママに、恰幅が良く皮肉とジョークが楽しいマスター。
y子の友人と紹介されて、オレも気に入られたようだ。
常連のお客さんにもオレまで紹介されて、一緒に盛り上がった。
その夜は他のアルバイトの子も交えて、遅くまで歌って飲んで、そして
帰る時間にはママが気を利かせてオレと一緒に店を出られるようにしてくれた。
恋人か女房を連れて帰る様な気遣いをされて、悪い気はしなかった。

その足で行き付けの「Bronx」へ行き、マスターのヤッシにバイトまでの顛末を
話し、ワインでとりあえずの乾杯!
彼女の楽しそうな表情を見、嬉しそうな声を聞いていると、心が癒されるのだ。

二人共が鎖に繋がれてなければ、今すぐにでも外へ飛び出す事が出来るのに。
オレだけの妄想かもしれないけれど、身体の関係は無くても心が繋がっていると
勝手に感じて、この関係を壊さない様に慎重になっているのだ。
家まで送る帰り道は、オレのコートのポケットの中で手を繋いで歩くのだ。
30分程かけてゆっくりと冬の夜道を歩く中年カップル。
でも心の中は30年前にままなのかも知れない。

彼女のマンションの前で「ハグさせて」とオレが云う。
「いいよ」と抱き合う二人。
でもkissはしない、出来ない。
唇が繋がると、後へは引けないし、それは二人が望む関係ではないから。

「ほらタクシーが来てるよ。早く乗って。」
急かされる様にタクシーに乗り込む。
後ろの窓を見ると手を振るy子が小さくなって行く。

寂しい気持ちと妙な安堵感に襲われるオレ。
携帯のメール着信音が鳴る。
y子用に設定している「Just a two of ua」。
「今日は遅くまで付き合ってくれてありがと。楽しかったよ。また飲もうね。
そしてお互い夢に向って頑張ろうね。負けないぞ。おやすみ。」
しばらくメールの文字を見ていたら、涙で画面が滲んできた。
こんなに好きになるなんて、考えもしなかった。
30年前に自分に嘘をついていた事を心の底から後悔した。

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