「僕僕対談!? 仁木英之さん×福田和代」ロングバージョン(1) | エンタメ探検隊!

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この対談は、五月初旬のある晴れた夜、大阪の某居酒屋とショットバーをハシゴして行われました。参加者は、仁木英之さんと、なぜか「僕も横で聞きたい」と言って東京から飛んできてくれたPHP社の編集者Yさんと、福田和代です。(以下、敬称略)

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  ※福田、寝とりますが……。仁木さん、良い笑顔ですね!


仁木「僕は大阪出身なんですけど、信州大学に進学して長野に行ったんです。そこから中国に留学したんです」
福田「なんで中国にふわあっと行かれたんですか」
仁木「就職するのがいやで、ニートになりたくて」
福田「ははあ、王弁くん(※)みたいですね」(※『僕僕先生』の主人公)
仁木「まさにそんな感じで。当時はゲームで遊んでばかりでした。福田さんはSEだったんでしょ」
福田「二年前までSEでしたよ」
仁木「なんで小説を書こうって思ったんですか」
福田「もともと子どもの頃からずっとお話を書いていて、自分に小説を書く以外のことができるとは思ってなかったんです。ところが、会社に入ってみると、意外となんとかなるもんだなあと」
仁木「理系だったんですよね」
福田「はい、女子が工学部に行くのは当時珍しかったんですけど、SFが書きたくて理系に行きました。数学できなくてねえ。文学部に行けと先生には言われたけど、無理やり押しきりました」
仁木「僕もSF大好きだったんですよ。洋画のノベライズが好きでよく読んでいたんです」
福田「SFだとどんな本がお好きですか?」
仁木「『スタートレック』とか、『E.T.』の続編とか。国内のものをあまり読んでいなかったんですが、最近になって上田早夕里さんの作品や長谷敏司さんの『あなたのための物語』などを拝読するようになって、やっぱりSFはすごいなと。大阪には、SF界のすごい作家さんがたくさんいるんですよ。北野勇作さんとか」
福田「そうですよ、多いんですよ。堀晃先生、眉村卓先生、田中啓文先生、田中哲弥先生、牧野修先生、小林泰三先生などなど(※)――飲み会すると、私たち、部屋の隅できゅーっとなりそうな濃い飲み会になりそう」(※なんで「先生」かというと、私が通っていた小説講座の先生だったからです)
仁木「ファンタジーの飲み会も濃いですよ。ところで、福田さんが実際に書くものは、SFというよりミステリですよね」
福田「大学に入ってから、だんだん自分の好みがミステリにシフトしていって」
仁木「福田さんの作品はタイトルのセンスがいいなと思ったんです。『オーディンの鴉』、『タワーリング』、『迎撃せよ』、みんな語感がいいですよ。僕はタイトルがへたで」
福田「えっ、『僕僕先生』って最高のタイトルじゃないですか。『くるすの残光』も」
仁木「『くるすの残光』は久しぶりにうまいこといったんです。五年ぶりですよ」
福田「私ね、『僕僕先生』のぬいぐるみをつくりたいんです。フェルトで作れそうでしょ」
仁木「実はですね、『僕僕先生』のキャラ商品としては、飲茶セットを作りまして、絶賛ではないですが発売中(※)です」(※新潮社公式ショップにて発売中!)

                 *

福田「ところで、仁木さんは、仙骨あるでしょう」
仁木「そうですね、最近椅子に座るとお尻が痛いんで、もしかしたら出てきたかも……」
福田「それは別の骨じゃ……」
仁木「うーん、いやでも、仙骨はないですね。作家の方とお話ししていると、この人にはきっと仙骨があるなと思う人が、わりといますけどね。沖縄在住の恒川光太郎さんとか。あの人はまさにエンジェル、いやフェアリーです。妖精ですよ」
Y「えっ、僕がお会いした時には、フェアリーって感じじゃなかったですけどね」
仁木「編集さんには、ややデビル。警戒されるんです」
Y「使い分けるんですか。それこそ仙人かもしれませんね」
仁木「編集さんはお仕事でいくから。僕は遊びに行くだけですからね」
福田「なるほどね。仁木さんは中国に、仙人の修行をしに行ったのにちがいないと思ったんですけどね」
仁木「したかったけど、煩悩にまみれてましたね。当時の中国の留学環境は、四百人ぐらいの男女が同じ建物にいるわけですよ。これで間違いがおこらないはずがないだろう、という青春なんです――いい修行になりました」


まだまだ続きます!