サクラクレパスの「モノ」から「コト」への発想の転換 | 知財を活用した「知財ポジショニング戦略」 徹底解説!

知財を活用した「知財ポジショニング戦略」 徹底解説!

仕組みやモノのアイデア権利化コンサルタント・弁理士 遠藤 和光

知的財産権(特許権、意匠権、商標権等)で保護されていない商品を製造している場合、競合他社の市場参入を抑制することができず、商品の機能や品質等で他社と差別化を図っても、結局は価格競争となる。そして、このような製造業は厳しい状況に置かれる。そこから抜け出すためには、製造業からサービス業に発想を転換し、「モノ」又は「コト」に関して知的財産権で保護して競合他社の市場参入を抑制することを検討してもよいかもしれない。

今回紹介するのは、「モノ」を知的財産権で保護して成功した事例である。株式会社サクラクレパスは、クレパスという「モノ」(商品)を売るだけでなく、クレパスを使って絵を書くという「コト」(体験又は生活スタイル)を普及させてビジネスを拡大できた。

<クレパスの誕生>
クレパスは、伸びが良いクレヨンの長所と混色ができるパステルの長所を兼ね備えたもので、1925(大正14)年に誕生した。

<知的財産権保護>

クレパスが誕生する大正14年よりも前の大正13年5月6日に「クレパス」を商標登録出願し、大正13年9月20日に商標登録(第167993号)されている。なお、クレパスの一般名称は、「オイルパステル(Oil pastel)」である。商標権は更新登録することにより永久に存続するので有効である。

大正15年に「棒状絵具製造機械」特許(クレヨン)と「速乾固形絵具」製法特許(クレパス)を取得した。その後、改良したクレパスに関して、順次特許権を取得している。
・平成5年7月28日出願、特許第3290254号、「固形描画材」(バリウムの溶出防止)
・平成8年12月10日出願、特許第3774524号、「固形描画材組成物」(変色防止)
・平成12年1月18日出願、特許第4447714号、「光輝性固形描画材」(光輝感と立体感の向上)
・平成13年2月9日出願、特許第4712200号、「固形描画材」(アスベスト対策)
・平成15年8月5日出願、特許第4114795号、「固形描画材」(アスベスト対策)

すなわち、改良品を順次権利化し、市場における優位性を保っていた。

<宣伝広告活動>
 以下の宣伝広告活動も行っている。
営業活動:当初は日本中の小学校を訪ね歩いた。
絵画コンクール:市長賞、市小学校長会会長賞、市教育長賞、朝日新聞社賞、サイクルスポーツセンター賞(自転車をテーマとすることにより自転車業界を巻き込む)
年賀状キャンペーン:サクラクレパス商品で作った年賀状をサクラクレパスに送ると、抽選で何十名かの人にクレパス16色復刻版をプレゼントしている。

<サービス業の誕生>
インストラクター資格養成教室:サクラクレパス認定講師を養成している。
インストラクターの派遣:養成した講師を幼稚園や保育園に派遣して子供に絵の書き方を教えている。
サクラアートミュージアム(美術館):展示会や実技講習を定期的に行っている。
サクラアートサロン(絵画教室):1981年から大阪梅田と東京新宿の2ヶ所で開講。




すなわち、製造業から複数のサービス業(絵画教室ビジネス、インストラクター資格養成ビジネス、派遣ビジネス、美術館運営ビジネス)が誕生し、ビジネスを拡大できたということですね。

参考:株式会社サクラクレパスHP 、「ニッポン・ロングセラー考」




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