治療成績だけではない、生殖医療専門クリニックに本当に必要なこと | 両角 和人(生殖医療専門医)のブログ

両角 和人(生殖医療専門医)のブログ

生殖医療専門医の立場から不妊治療、体外受精、腹腔鏡手術について説明します。また最新の生殖医療の話題や情報を、文献を元に提供します。銀座のレストランやハワイ情報も書いてます。

生殖医療のクリニックを選ぶ際、多くの方が気にされるのは、治療成績や医師の経験、培養技術などだと思います。

もちろん、これらは非常に大切です。

 

しかし私がクリニックを運営するうえで、それと同じくらい大切にしていることがあります。

それが「安全性」です。

 

生殖医療では、患者様からお預かりした卵子、精子、そして胚を扱います。

私たちはこれらを、患者様の命の次に大切なものとして扱わなければいけないと考えています。

例えば、凍結保存している胚や卵子は液体窒素のタンクの中で長期間保管されます。

 

通常通り運用されているときには問題がなくても、タンクに異常が起きたらどうするのか。液体窒素が減少したらどうするのか。夜間や休日に異常が起きたらどうするのか。

そこまで考えて初めて、本当の意味での安全管理になると思います。

 

当院では凍結タンクを一つの方法だけで監視するのではなく、タンク表面の温度を監視する「Logbee Cool」と、液体窒素の重量変化を監視する「NLO」を用いて二重に監視しています。

異なる仕組みで監視することで、万が一どちらか一方だけでは捉えられない異常が起きた場合にも、できるだけ早く気付ける体制を整えています。

 

 

また、生殖医療では停電への備えも非常に重要です。

胚を培養しているインキュベーターをはじめ、培養室には電力を必要とする重要な機器が多数あります。そのため当院では、停電が起きた場合にも培養環境を維持できるよう非常電源を整備しています。

 

さらに、目には見えませんが、空気の質も重要です。

培養室や手術室では空気環境にも配慮し、VOC(揮発性有機化合物)をできるだけ抑えた環境を整えています。壁材や塗料についても、単に見た目だけで選んでいるわけではありません。

そして、安全性という言葉には、機器や設備だけではなく、患者様が安心して治療を受けられることも含まれると私は考えています。

 

診察室から会話が漏れないこと、周囲の人から見られないこと、名前を呼ばれずに診察を受けられることなど、プライバシーへの配慮もその一つです。

こうした設備には、患者様からは見えないものがたくさんあります。

 

何も起こらなければ、その存在に気付かれることすらない設備もあります。

しかし、安全対策とは本来そういうものだと思います。

「今まで大丈夫だったから、これからも大丈夫」ではなく、「もし何か起きたらどうするか」を先回りして考え、できる限り備えておく。

私たちはその積み重ねが、生殖医療専門クリニックとして非常に大切だと考えています。

良い治療を行うこと。

高い培養技術を維持すること。

そして、お預かりした大切な胚、卵子、精子を安全に守り続けること。

 

どれか一つだけではなく、すべてを高い水準で実現するクリニックを目指して、これからも設備と安全管理を継続的に見直していきたいと思います。

 

 

 

移転後はより一層安全性を向上させて参ります。