不妊治療では、どうしても女性側の負担が大きくなります。
採血を受け、注射をし、採卵を受け、そして胚移植を受ける。
ご夫婦二人の治療でありながら、実際の治療の多くは女性が一人で経験することになります。
ご主人やパートナーの方も一緒に治療をしているつもりでも、「実際に何が行われているのか」はなかなか分からないものです。
そこで当院では、胚移植の際にご主人に立ち会っていただくことができます。
移植の際には、奥様のそばに座っていただきます。
まずモニターに、これから移植する胚が映し出されます。
培養士から胚の状態について説明を受け、実際に胚が移植用の細いチューブの中に入っていくところまで確認していただきます。
そして胚移植の際には、超音波の画面を一緒に見ていただきます。
子宮内にカテーテルが入り、胚が戻される瞬間には、超音波の画面上で白く光る部分を見ることができます。
ほんの数分の出来事ですが、この時間をご夫婦で共有することには大きな意味があると私は考えています。
実際に立ち会われたご主人からは、
「妻の大変さがよく理解できた」
「より不妊治療を二人でやっているという気持ちになった」
「妻から聞いているだけでは分からなかった治療を実際に見ることができた」
といった感想をいただいています。
また奥様からも、
「主人が一緒にいてくれたので安心できた」
「いつも一人で通院していたので、二人で取り組んでいるという気持ちになれた」
「初めての移植で不安だったが、立ち会ってもらうことで安心できた」
といった声をいただいています。
私は、これはとても大切なことだと思っています。
不妊治療は、結果だけを追いかけていると、どうしても採卵数、受精率、胚のグレード、妊娠判定といった数字の連続になってしまいます。
しかし、その一つ一つの治療をご夫婦がどのように経験するかということも、とても大切です。
特に胚移植は、それまで培養室で大切に育ててきた胚を子宮に戻す大切な治療です。
その瞬間をご夫婦で見守る。
そして「二人でここまで治療をしてきた」ということを実感していただく。
立ち会い移植には、そのような意味があると思っています。
もちろん、立ち会いを希望されない場合には無理に行う必要はありません。
お一人で落ち着いて移植を受けたいという方もいらっしゃいます。
大切なのは、それぞれのご夫婦が自分たちに合った形で治療を受けられることです。
当院では、治療成績や技術だけではなく、治療を受ける時間そのものも大切にしたいと考えています。
胚移植という大切な瞬間を、ご夫婦で迎えていただく。
立ち会い移植は、そのための一つの選択肢です。
