ERA単独か、それとも3つの検査(ERA+EMMA+ALICE)をまとめて行うか? | 両角 和人(生殖医療専門医)のブログ

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ERA+EMMA+ALICEという3つの検査があると聞きました。

ERA単独で受ける事と、この3つの検査を一緒に受けるべきか迷っています。検査は痛みが伴うとも聞きました。メリットなどを含め具体的な事を教えてください。

 

このような質問を受けましたのでお答えします。

 

ERAですが、良好な胚を移植しても妊娠に至らない方の約3割が着床の窓がずれている事が分かっています。これは世界中で数万件の調べられた結果をもとに解析され各国で臨床に用いられておりエビデンスがあることでとてもお勧めの検査です。遺伝子解析により詳細な着床時期のズレがわかりピンポイントで移植をすることができます。

 

EMMAは子宮内膜マイクロバイオームといって、子宮内の細菌環境が胚移植に最適な状態であるかどうかを判定する検査です。

次世代シーケンシング(NGS)技術を用いた子宮内膜細菌叢の分析では、培養可能な細菌も培養できない細菌も含め検出することができます。

子宮内の環境においてラクトバチルス属(乳酸菌)がとても大切で、細菌から子宮内を守っています。

ラクトバチルス属の菌の割合が90%以上の方は、90%に満たない方よりも妊娠率が2倍以上高くなることが2016年のスタンフォード大学の研究者らにより示されています。

Am J Obstet Gynecol. 2016 Dec;215(6):684-703

ラクトバチルス属が十分に足りないと、慢性的な子宮内膜炎になりやすく、治療方法は膣内への乳酸菌製剤の使用、乳酸菌製剤の錠剤の内服になります。

 

ALICEは感染性慢性子宮内膜炎検査で、慢性子宮内膜炎(CE)の原因として特によく認められる細菌を検出する検査です。

従来の組織学や子宮鏡検査と異なり、細菌を特定することができるようになるため、診断されずに放置される子宮内膜疾患を見つけピンポイントでかつ個別化された治療が可能になります。

なお組織学検査では慢性子宮内膜炎が過小診断される一方、子宮鏡検査では過剰診断となりやすなります。

 

これら3つの検査を一度で行うメリットは、痛みが伴う検査のため負担を軽減できることが大きな利点となります。子宮内膜の組織を取る際は細い検体採取キットを奥まで入れ内膜の細胞をある程度採取する必要があります。細胞の量が少ないと正確な判定ができなくなり再検査になることもあります。


検査をどこまですべきかは過去の検査結果や移植の結果などを踏まえ、全てやらなくても良いケースもあるため個別に検討すべきかと思います。


 

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