人間の皮膚、口、腸などに生息する細菌は、消化、代謝、免疫などで重要な役割を担っている。
だが、生涯にわたる恩恵をもたらすと考えられている通路の産道を経由せずに生まれる帝王切開児の体内細菌は、産道を通る自然分娩児とは大きく異なる。
英医学誌「ネイチャー・メディスン(Nature Medicine)」に掲載された研究論文によると、統計上、帝王切開児は後年に肥満、ぜんそく、アレルギー、免疫不全などを発症する可能性が高いという。
今回の研究に参加した科学者らが所属する米ニューヨーク大学ランゴンメディカルセンター(New York University Langone Medical Center)から発表された声明は「自然分娩でもたらされる細菌が施す『教育』を、帝王切開が妨げている」と述べている。
とりわけ重要なのは、新たに形成される免疫系が、有益な細菌と疾患を引き起こす細菌とを見分けるのを、これらの細菌が助けることだ。
■自然分娩児が持つ細菌の一部獲得に成功
今回の研究で、研究チームは、帝王切開で生まれた新生児に、母親の膣から採取した体液を塗布した。
研究チームは、この新生児を30日間観察した結果、自然分娩児が持つ細菌の全部ではないが一部が、新生児の体内に取り入れられていることを発見した。
母親の体液を塗布されなかった帝王切開児は、マイクロバイオームとして知られる体内の細菌叢(さいきんそう)が大きく異なっていた。
だが、この塗布治療が長期的な保護効果をもたらすかどうかはまだ不明だ。
論文主執筆者のマリア・ドミンゲス・ベロ(Maria Dominguez-Bello)氏は、声明で「現在、米国の新生児の3分の1が帝王切開で生まれており、医学上必要な数の2倍に上っている状況においては、新生児の誕生時のマイクロバイオームが将来の疾患リスクに影響するかどうかということが、ますます差し迫った問題となっている」と指摘している。(c)AFP